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WISH  作者: 国分志市
0章 全ての始まり
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0話

初めての作品です。拙い作品ですが、見てもらえると嬉しいです。また、似たような作品がありますが、内容は違うので見守ってもらえると幸いです。

 早く…!早く完成させなくちゃ…!!

 彼は、焦っていた。

 それもそのはずだ。彼は、もうすぐ自分が死んでしまうことを悟っていたからだ。


 彼は、生まれつき体が弱く、心臓に疾患があった。

 その為、彼は自分が入院している病院から一度も出たことはない。18歳になった今でもだ。

 もちろん、幼い頃から病院の外の世界には興味があった。

 子供の通う学校とは、どんな所か。

 動物は、どんな所でどうやって生きているのか。

 自分が住む日本とは、どんな所で、外国はどんな所か。

 しかし、彼の眼から見えるものは、病院の中と窓から見える町の景色だけだった。

 だから、彼は両親から色んな話を聞かせてもらった。

 海が青いこと。日本にはサムライがいたこと。

 彼は、外の世界に憧れた。色んな事を知れば知るほど、もっと色んな事を覚えたい。早く病気を治して、外の世界で生活してみたい。彼はそう思った。

 

 そんな彼に一つ目の転機が訪れた。

 病院には、学校に通えない子供の為に院内学級があった。彼は、6歳になり、小学校に入学する年頃になった為、院内学級に通えるようになった。

 院内学級に通うようになった彼は、たくさんの事を学んだ。先生に分からない事をしつこくしつこく聞いた程だ。彼は、勉強に夢中になった。

 彼にとっては、院内学級での時間が病院生活の中での一番楽しい時間になった。友達は、勉強が嫌いだと言ったが、彼は勉強が好きだった。院内学級がない日も今までの復習や予習に明け暮れた。

 10歳の時、母親からクリスマスプレゼントにパソコンを貰った。父親に彼の病室でインターネットを出来る環境を整えてもらい、病室でも、色んな情報を得る術を学んだ。

 そうやって努力して(彼は楽しいと思った事をやっていただけだが)、彼は同じ年頃の子供より知識に長けた子供になった。成長するにつれて更にたくさんの知識を吸収していった。

 しかし、彼はそれでも満足出来なかった。彼は、異常なペースで知識を増やしていった。まるで生き急いでいるかの様に。


 二つ目の転機が訪れたのは、13歳になった頃だ。

 彼の父親は、IT会社の社長であり、プログラマでもあった。そこで、彼は、父親に無理を言って、プログラミングを教えてもらった。

 プログラミングとは、コンピュータに指示を与える命令書を書く作業みたいなものだ。ゲームや会社等で使う会計ソフトもプログラミングで出来ている。

 元々呑み込みが早い彼は、どんどんプログラミングの技術を覚えていった。彼は、簡単な計算処理が出来るプログラムやシンプルなゲームを作って楽しんでいた。

 両親に自分が大人になるまで生きられないと言われたのはこの直後だった。

 

 とてもショックだった。

 彼は、小さい頃からいつか退院して、普通の生活が出来るものだと思っていたから、当然だ。

 彼は、一晩中泣き明かした。それから一生懸命に考えた。彼は知識はあったが、それは、子供が学校で学ぶ位でしかない。ならば自分に出来ることは?

 そこで思い至った。

 プログラミングだ。

 プログラミングで、人を驚かせる様な、自分が生きた証になる様なゲームを作る。そう彼は、決心した。


 それからの彼は、プログラミングの技術の習得と自分が考えただけゲームを作る事だけに没頭した。院内学級にも行かなくなった。

 そして、17歳の夏、あと1年しか生きられないだろうと主治医から告げられた。

 この時は、ショックはなかった。ただ早くプログラムを完成させなくちゃ、それしか考えなかった。

 

 時は巡り、2010年の夏、彼は、プログラムの完成させられるめどがついた。ただ、自分の死期も近いと思った。プログラムの完成は、ギリギリ間に合うかどうかといった所だと感じた。

 

 そして、今日。

 いつもより、意識も朦朧とし、彼は、今日死ぬのだと思った。しかし、プログラムももうほんの少しで完成させられる所に至った。


 もう少し…、もう少しだけ待ってくれ…!彼は、そう願った。

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