G&T 2
「お兄ちゃん、入ってってよ!」
毎度ながら威勢の良い掛け声。ましてや女の子を見る目や食いつき方で、その男が客になり得るかの期待値なんてある程度予測の付く物なのだろう。
「この子、可愛いですね」
「そうやろ~、今日はもうこんな時間やから後一人しか入れへんで」
初めから「うっかり」なんて事の無い様にたり得る金額を所持してこなかった俺に選択肢はない、ハズだった。
「でも今日持ち合わせが無くてさ、雪華?この子は何曜日にいることが多いのかな」
「残念やなー。この子は火曜日、月に二回か三回くらいしか入れへんのよ。ちょっと待ってて、店の電話番号書いた紙もってくるから。次来てくれる時はなっちゃん出勤してるか確認してくれたらお兄ちゃんも無駄足使わんくてすむやろ」
あばちゃん、そしてなっちゃんと呼ばれる女の子は俺が今日、客になることはないと知りながらも笑顔を崩さない。そんな姿にますます好感を持ってしまう。
「この子、なっちゃんっていうん?」
「そうやで、なつきちゃん。だからなっちゃん呼ばれてんねん」
「そうなんや、残念やな。めっちゃ可愛いし良い子そうやのに、お金もって来てればなー」
無駄に会話を伸ばしたい自分がいて、そして自分の本心も見えていた。今から何とかして入りたい。
「なあ、ここから一番近いATMのあるコンビニってどこかな?」
「あの角曲がってしばらく言ったら39ストアあるの分かる?でも今からやったら間にあわへんで。無理せんでも、また今度来てくれたらいいから」
「いや、ギリギリいけるわ。待っといてや」
俺はそう言うとエンジンを吹かしバイクを走らせた。背中からなつきちゃんの「行け~」という楽しげな声が聞こえた。もう、完全にやる気になっていた俺はATMに利用客が並んでいても不必要に焦ることなくどうせまたヘルメットをかぶる頭を触って髪型を整えたりとしていた。
そして0時間際、本当に時間に間に合わせたことにおばちゃんもなっちゃんも驚いた顔を見せてくれた。それが演技なのか心から驚いているかなどはどうでも良かった。とにかく、俺は間に合った。
「バイク、店前においてて大丈夫かな?」
「うん、事故せぇへんか心配やったわ。さぁ、入り」
実際に自分が走ったわけでもないのに息を切らせ気味な俺を落ち着かせてくれる穏やかさで、おばちゃんは俺を店に上げた。そしてなっちゃんが先を行き、俺を階段上の二階の部屋へとリードしてくれた。
カモがネギしょって御来店。そんなフレーズが浮かびつつも俺は目の前のなっちゃんと二人きりでいることにただただ、浮ついた気持ちでいた。