G&T 1
そんなに捨てたいのなら、行けばいいじゃん。まあ、そこまでは勧めないけど。でも今のままじゃ焦り続けるばかりって、自分でも分かってるんだろ?俺にこうやって何度も聞きに来てる時点でお前自身どうしたいか、もう答えは出ているわけで・・・
まあ、何事も経験だよ。その時のこと?今となっては「なんであんな事を」と思ったりもするけどさ。
その時はマジだったんだよ。いくら周りからバカだって言われようとも。別に恥だなんて思ってないしな。分かったから、何度でも話してやるから。
その夜は仕事帰りだった。いつも通り自宅へ直行するつもりではあったのだが、色々と順調な人生に退屈しつつあったせいか、刺激が欲しかったんだ。だから、バイクを走らせて色んなディープスポットに時折脚を運んでいた。
その晩俺が選んだ場所は、宿街。そう、ただの宿が建ち並ぶ宿街。でもその通りにある宿の前にはなぜかおばちゃんと綺麗な女の子がいて、通行人はみんな男でおばちゃん達は男たちを手招きしている。
事情を知らない人が見たら一体どう思うのだろうかな?そこがどんな場所であるかを知っていた俺にとっては刺激的で何だか面白そうな光景でしかなかった。いや、初めて来た時はびびりまくっていて体験者である友達にメールで行動の指示を仰いでいたのだが。
その時俺は宿内での出来事を体験したく大金を叩いてごく短時間宿泊し、そこの仲居さんと一時的な恋に落ちたのだが。その時に心の伴わない行為がどれだけ無機質でつまらないことかを知った。
それ以来年に一度程度かその街の異様とも言える光景を見物に行くことはあっても店内に入ることはなかった。水商売や風俗、ギャンブル、ナンパ。夜の世界、裏の世界にもそろそろ飽きたつもりだった。
その日もどの位のレベルの女の子がいるのか、こんなに綺麗な子がどうしてこんなところで?という興味を惹かれるその空間を楽しむだけのつもりだったのだが、ある通りの店前に座る女の子に俺は釘付けになり立ち止まっていた。
彼女のどんなところが俺を引きつけたのだろうか。普通の清楚な感じのルックスか。優しげな、あたかも俺のことを好きなのでは?と思わせぶるような表情か。それとも昔好きだった子に似ている部分でもあったのだろうか?
理由は分からないが、ともかく俺は立ち止まらずにはいられなかった。
彼女は、とても可愛かった。