#5
予想通り、水色の彼女は天使だった。十六~十七歳くらいにしか見えないが、見た目通りの年齢という事は無いだろう。
彼女の名前はアリシア。勇者のサポート役という事だが、異世界から来た俺達が好き放題やらないための、お目付け役だろうな。
アリシアが引き連れてきた人達は神官で、召喚の義を執り行ったとか。俺としては、大天使に送り込まれた感じなので、あまり実感は無い。
「それで、勇者様は何処に居るんだ?」
「そうそう。ヤツに会いに来たんだから」
伊達は口を開かずに、ポケットからラッキーストライクを取り出すと、火を着けた。
なので、俺もポケットからビリガーエクスポート マデューロを取り出し、火を着ける。
「いきなりやりたい放題ですね…」
アリシアは、俺と伊達を見て溜め息をついた。
「勇者様は、夜の王に支配された地へ向かっております」
神官の一人が俺達の質問に答えてくれた。
フードで顔は見えないが、声からすると、かなり若い。中~高校生の女の子ぐらいか。
「夜の王って、ヴァンパイアだよな?」
「たぶん、そうでしょう」
真田の問いに、伊達が答える。
「ま、なんでもいいや。早く行こうぜ」
俺は面倒臭くなってきたので、そう提案する。
「ですな」
伊達は、吸い終わったタバコを携帯灰皿に捨てながら、そう呟いた。
「では、この者をお連れください」
今度は年輩の男性らしき神官がそう言って、さっきの神官の女の子の背中を押した。
「お断りします。道案内はアリシアさんにお願いしますから」
真田が満面の笑みで答える。
「そう言われましても、天使様と勇者様にはお供を付ける決まりですので…」
年輩の神官は困っている様な声を出した。
神官達としても、『あとはよろしく』と自分達は何もしないわけにはいかないのだろう。こういう業種は、権威が大事なお仕事なんだから。
「仕方ない。連れてこう。さっさと合流したいし」
俺は紫煙を吐き出しながら、合意する事にした。
「えー、面倒じゃん」
「人数増えるのはなぁ…」
真田も伊達も嫌そうだ。
「大天使に、車お願いしてあるから、用意してくれたのが軽じゃなきゃ五人乗れるから大丈夫でしょ」
俺は二人にそう言って、スマホを確認する。
アイテム一覧にセルシオとある。
「セルシオ用意してくれたから、五人乗っても狭くないと思うよ」
「お前、何でセルシオなんだよ」
「ファンタジーの世界で車かよ」
真田は車種に異議があるらしいが、伊達は車を持ち込んだ事自体に異議があるようだ。
「SUVやミニバンみたいに車高が高い車の運転は苦手だし、FRのセダンなら馴れてるから、いざって時に操りやすい。そして、馬とか乗れないし」
「ミニバンなら俺が注文しといた。アルファード」
伊達がスマホの画面を見せてくる。
たしかに、アイテム一覧にアルファードとある。
「さっき、車否定してなかったか?」
「ファンタジーに車とか風情無いからね。でも、必要になるかもしれないじゃない?」
伊達は悪びれずにそう言い放った。
「神官も連れて、車で移動するという事でいいですか?」
ちょっと疲れた様子で、アリシアが口を挟んできた。
「じゃ、広いしアルファードで行こうぜ」
真田の一言で車種も決まった。
いよいよ冒険に出発だ。




