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#56

「ここは…?」


 気が付くと、上下左右、視界の全てが白い空間に立っていた。まるで、雲の中の様だ。


「気が付きました?」


 声がした方へ振り向くと、アリシアが居た。


「アリシア!ここは、どこだ?みんなは、どうなったんだ?」

「ここは、時空の狭間ですよ。みなさんに関しては、これから話します…」


 アリシアは沈痛な面持ちで話し始めた。


「ユキが使った魔法は、あの世界を生け贄にして、あなた方の世界を改編するためのものです。あれを発動させるために、エミリーさんの魂は喰われました。火と大地の二人の神官の魂も…」

「どういう事だ…?」

「あの魔法には、四属性全ての力が必要なんです。三人の魂を吸収すれば、それが可能です」

「何故、世界を改編するんだ?」

「たぶん、アケチさんが目的でしょう。あなた達、六人の存在に干渉しようとしています」

「なるほどな…」


 予想以上の執念深さだ。


「あなた達を守るため、大天使様はあなた達六人を別の存在へと転生させました」

「は?どういう事だ?」

「別の存在になってしまえば、ユキの追跡を躱せますから。それに、別の存在と言っても、あなた達が友達同士である事などは変わりません。名前を変えて、若返るくらいに思ってもらえれば」

「証人保護プログラムみたいなものか…」


 ファンタジーみたいな世界で、そんなシステムが存在するのは驚きだが、安全である事に越した事は無い。


「ただし、あなた以外の五人は、ユキの魔法の影響で、書き換えられる以前の記憶を失います。あの世界での記憶も。あなただけが特殊で、記憶が書き換えられず、記憶を二重に持つことになります」

「なるほど」


 前世の記憶とでも思っておけば構わないだろう。


「あなたに与えられた選択肢は二つ。新しい人生を平和に生きていくか、あなた達の世界へ入り込んだユキを見付けて戦うか…」

「ユキが俺達の世界に!?」

「はい。そのせいで、あなた達の世界は、マナに溢れてしまいました」

「俺達の世界が、ファンタジーに片足突っ込んだ世界になってるのか…」


 驚く俺を置いて、アリシアが真剣な表情になった。


「今、あちらの世界は、大天使様が時を停めています。崩壊を防ぐためです。停めていると言っても、完全に止まっているわけではなく、ほんの僅かには動いているんですが」

「それって、タイムリミットがあるって事だよな?」

「はい。その時までにユキを倒さなければなりません。そして、エミリーさんの体も大天使様が保存しているので、魂を取り戻せば助かります」


 俺は、一つ溜め息を吐く。


「それって、つまり、俺がユキを倒せば、エミリーも世界も救われる、と?」

「はい…」

「じゃあ、実質、選択肢は一つなわけだ」

「ごめんなさい…。私達は、大天使様が時を停めるお手伝いをするので精一杯で…」


 アリシアは言葉を詰まらせて、俯いてしまった。


「まぁ、いいさ。ゲームはよくラスボス手前で投げ出してたけど、今回は最後まで付き合うよ」

「ありがとうございます!」

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