#54
「なんだ?」
屋敷の正面玄関辺りから、魔力の気配が漂い出した。
明智の声を合図に、全員が緊張状態になる。
「どうなってるんだ?」
玄関の扉が開き、ロイドとユキが出てくる。ロイドがこちらを指さすと、ユキが頷いているのが見えた。
「やはり、騙されたんじゃないですか?」
シャーリーが険しい顔をしている。
「まあまあ。外に連れ出して来るって約束だったし、出て来たんだから倒せばいいんじゃないの」
明智が数歩歩み出て、スペクトラを構える。
「どうして、そんな物を向けるんですか?私は、あなたを愛しているのに」
屋敷の敷地から出て、明智と向き合うユキが悲しそうに言った。
明智のスペクトラが火を吹く。
しかし、サブマシンガンのフルオート射撃は、ユキが纏う魔力によって全て防がれてしまった。
「マジかよ!」
明智が空になったマガジンを替える。
「いくらフルオートでぶっ放したからって、通常弾じゃ効かないだろ」
「ダメかぁ」
明智は、俺の指摘を受けながらも、さらに撃ちまくる。
「たかが9パラが!って言われちゃうよ?」
そう言いながら、俺も両脇のホルスターから拳銃を抜く。弾頭が銀製のものを装填してあるが、あまり効果は望めないだろう。
ガァン!
轟音と共に、真田のリボルバーからも銃弾が発射された。
さすがに威力があるので、魔力の壁を貫通しないものの、衝撃は多少伝わる様だ。
「銃じゃ埒が明かないよ」
伊達が俺達を制止し、ワイヤーを引き出す。
銃撃が止むと、ロイドがユキに飛びかかった。
「鬱陶しい!」
ユキは魔力を帯びた手刀で、ロイドを斬りつけた。
ガードしたロイドの左腕が灰になる。
「やはり、真祖でもない身では厳しいですね」
左腕の傷口を押さえながら、ロイドが後退した。
「おりゃ!」
明智は日本刀を抜いて、ユキに斬りかかるが、避けられてしまう。
続いて伊達がワイヤーを飛ばす。
「邪魔!」
ユキは、手刀で伊達のワイヤーを斬り裂いた。
「マジかよ…」
驚愕する伊達の横を走り抜け、抜き打ちで斬りつけるが、ユキの魔力を纏った右腕に防がれてしまう。
俺に続いて駆けて来ていたアリスが、その一瞬の膠着を見逃さず、俺を飛び越えて、双剣を振るった。
しかし、ユキが空いている左手を頭上にかざすと、空中に深紅の光で描かれた魔方陣が現れる。
魔方陣に刃が接触した瞬間、アリスは弾き飛ばされてしまった。
「アリス!」
いったん、ユキと距離を取り、アリスの方へと走る。
「大丈夫か?」
「はい」
アリスを背に庇い、刀を構え直すと、ユキが両手を天に向けて伸ばしているのが見えた。
「何をする気だ?」
ユキから発される魔力が膨れ上がり、全員に緊張が走る。
「どうして、私の邪魔ばかりするの!」
激昂と共に、ユキの頭上に巨大な魔方陣が現れた。




