#50
「お邪魔しまーす」
スペクトラを構えた明智を先頭に、俺と伊達が村長の家へと侵入する。
応接間まで進むと、そこには村長だけでなく、北の神殿の街で遭遇したヴァンパイアも居た。
「お前は!」
右手の拳銃をヴァンパイアに向ける。
「そんなに慌てないでくださいよ。別に、あなた達と戦う気はありませんから」
ヴァンパイアが左手をヒラヒラとさせて、戦意は無いとジェスチャーをしている様だ。
「どういう事だ?お前は夜の王の僕なんだろ?」
「そうでしたよ。でも、夜の王は死にましたからね。喰われちゃったんですよ」
「喰われた?」
「ええ。あなた達の元お仲間にね」
ヴァンパイアは、肩を竦めた。
「それで?それが俺達の敵じゃない理由になるとでも?」
伊達も警戒を緩めず、ワイヤーを構えたままだ。
「主が居なくなった時点で、私には人間と戦う理由も無くなりましたから、全てはどうでも良くなったんですよ。神官は、魔法で主の姿を真似て、他の僕を騙して操っていましたが、それもどうでも良い事です。ところが、彼女は余計な事をしましてね…」
ヴァンパイアは溜め息を吐くと、カップを持ち上げて、飲み物を一口飲んでから続けた。
「牢に入れていた二人の神官まで喰ったんですよ。これで彼女は、魔の者でありながら三つの属性を手に入れ、魔力も大幅に上がってしまった」
「そちらに取って、都合が良い話に聞こえるけどな」
「たしかに、彼女に騙されて従っていた者達にとっては良い話でしょうね。まぁ、彼らは、あなた達と私に一掃されてしまいましたがね」
俺達が倒した以外のヴァンパイアを、こいつが一人で始末したとは簡単には信じられない。
「お前が他の連中を倒したと言うのか?」
「そうですよ。彼女を止めるのに邪魔でしたから」
「何故、止める必要がある?」
「そこですよ、本題は。彼女は、さらなる力を欲した。風の神官を喰おうと狙っているんです。もし手に入れれば、世界を滅ぼす可能性がある」
「何だと…?」
こいつの話が本当なら、夜の王より厄介な相手が現れた事になる。
「主も居ないので、自由気ままに生きていこうと思った矢先にこれですよ。世界が無くなってしまっては、困りますからね」
「お前の話が本当だと言う証拠は?」
「彼は、村を守って戦ってくれました」
伊達の質問に答えたのは、村長だった。
「本当ですか?」
明智は信じられないという顔をしている。
「はい。それに、彼は私の叔父なんです…」
村長は、驚愕の真実を語り始めた。




