#46
明智には大した怪我も無く、原田は眠っているだけだったので、アリスを護衛に残して礼拝堂を出た。明智はアリスの強さを知らないのだが。
(どこへ行ったんだ?)
礼拝堂の正面から見える範囲には、仲間は見当たらない。
仕方なく、礼拝堂の周囲を回り始めると、遠くから剣戟の音が聞こえた。
音の方へ走ると、満身創痍の本田と、逃げて行く松永が見えた。
「大丈夫か?」
「こんなの何ともねぇよ」
本田は刀を右肩に担ぎ、左手で剣を杖代わりにして体を支えている。
「歩けるか?」
「あぁ」
本田を連れて礼拝堂の前に戻ると、伊達と真田も戻ってきていた。
「お疲れ。そっちは?」
「長髪は倒した。松永とユキは逃がしたが、原田は取り返した」
真田に、分かっている限りの情報を伝える。
「こっちも金髪は倒したよ」
伊達がタバコに火を着けながら、疲れた顔で言った。
「じゃあ、明智達を呼んでくるから、戻ろうぜ」
真田が礼拝堂へと入って行った。
その晩、俺が一人で葉巻を吸っていると、アリスがやって来て、自身の事を話してくれた。
アリスの父は真祖のヴァンパイア、母は水の天使。アリスは、ヴァンパイアと天使のハーフだった。
父は、母と一緒になる事で血を吸う事を止め、力を捨て、人の中で暮らしているという。
ちなみに、吸血されただけではヴァンパイア化はしないのだそうだ。吸血する事と血を与える事の両方で呪いは完成する。
ゾンビに咬まれるとゾンビ化するのは、ゾンビの肉体が腐敗していて、咬まれるとゾンビの血も体内に入ってしまうのが原因だ。
両親の力を受け継いだアリスは、家族の平和を壊しかねない夜の王を倒すため、母に縁のある北の神殿に召喚された勇者を探していた。
「アリスが一緒に戦ってくれるのは心強いけど、夜の王も同じくらい強いんだろ?」
「夜の王は、たくさんの人から血を吸っているはずですから、私よりも強いと思います…」
「そりゃ強敵だ」
アリスより強いとしたら、俺達では敵うかどうか…。
「皆さんの力を合わせれば、きっと勝てますよ」
「そうだな」
俺達は、勝たなければならない。
元の世界へ明智を連れて帰るために。




