#44
それから街までは何も無く、無事に到着した。
原田と島津が回復するまでは、街に滞在する事になり、数日が経った。
「大変だ!島津が!島津が…!」
宿に併設されている酒場で俺達が呑んでいると、本田が叫びながら飛び込んで来た。
呑んでいると言っても、俺は酒を飲めないので、ジュースだが。
「どうした?何があった?」
明智がウイスキーの入ったグラスを置いて、本田に尋ねる。
「島津が殺られた!」
俺達は立ち上がり、明智を先頭に島津が寝ているはずの部屋へ走った。
島津は胸にサバイバルナイフを突き立てられ、ベッドを真っ赤に染めていた。一目で息絶えているのが分かる。
目を閉じていて、苦しんだり暴れた様子も無い。眠っているところを、いきなり殺られたのだろう。
部屋に戻った本田が発見した時には、すでに手遅れだったそうだ。
「西の勇者に殺られたか…」
凶器からして、間違いない。
「…、原田さんは!?」
原田が寝ている部屋へ、明智が慌てて駆け出して行く。俺達も追う。
「何てこった…」
明智の呟きに不安を覚えつつ部屋に入ると、原田のベッドは空だった。
「おい、これ!」
真田がサイドボードを指差す。手紙が置いてあった。手紙は明智宛で、ユキからだ。
「原田さんが拐われたのは、俺のせいだ…」
手紙を読んだ明智が、力無く言った。
ユキは原田を拐い、明智を呼び出した。手紙はそのためのものだ。
島津の事をシャーリーとエミリーに任せ、俺達は明智について行く事にした。
指定された場所は、この街の礼拝堂だ。
「松永、てめぇ、何してんだよ!」
礼拝堂の前には松永が立っていた。迷彩服の男二人と共に。
本田は怒鳴りながら、刀を抜いた。
「決まってるでしょう。愚かな人間風情とはおさらばしたんだよ」
松永は本田を嘲るように細身の剣を抜いた。
「明智って奴はどいつだ?」
迷彩服の男のうち、長髪を後ろで結んだ奴が話し掛けてきた。
「俺だ」
明智が一歩前へ出る。AK47を男達へ向けながら。
「お前だけ中へ入れ」
男が礼拝堂を指差す。
明智は頷くと、礼拝堂へ入って行った。原田を人質に取られている以上、言う通りにするしかない。
「お前達は、ここでさらよならだ」
長髪が大型のサバイバルナイフを抜いた。
もう一人の金髪が、拳銃を抜く。
「松永は、俺に任せてくれ!」
本田が松永へ斬りかかっていく。
「仕方ないな」
俺も刀を抜いて、長髪に斬りかかった。
真田と伊達は、銃を抜いている。
「楽しくなりそうだ」
長髪は、刀をナイフで受け止めながら、舌なめずりをした。
真田達と金髪は、撃ち合いをしながら離れていく。
本田と松永も、離れていった。
礼拝堂の前には、俺と長髪だけだ。
(これなら、あの力を使える)
バックステップで長髪から距離を取り、集中して霊力を纏う。
俺の体を白い光が覆った。
「面白いな、その力。まるで、俺達みたいだ」
長髪はそう言うと、紅い光を纏った。魔力だ。
「ま、全員が使えるわけじゃないけどなぁ!」
長髪は、紅く光るナイフを振りかざし、躍りかかって来た。
ナイフを避けながら、斬撃を繰り出す。
しかし、相手も俺の攻撃を避ける。
「悪くないが、いつまでもつかなぁ?」
幾度も互いの攻撃が交差し、赤と白の光の軌跡が入り乱れる。
(マズイな…)
力の出力では負けていない。むしろ、最大出力では勝っている。しかし、肉体的な持久力は相手の方が上だ。相手は戦闘のプロで、その上、ヴァンパイアなのだから。
こちらは息が乱れてきているのに対して、相手の動きは全く鈍らない。
「喰らえ!」
刀に纏わせた力を光の刃として飛ばす。
相手が、それを避けた隙にバックステップで距離を取る。
大技を放つにしろ、体力を回復させるにしろ、いったん離れる必要があるからだ。
「バテてきたか?」
長髪は不敵に笑いながら、ナイフをもう一本抜いた。
さらに手数を増やされるのは、かなりマズイ。
「大丈夫ですか!?」
振り向くと、数メートル後ろにアリスが立っていた。
「何で来たんだ!戻れ!」
「大丈夫です。私に任せてください」
アリスの両目が深紅に輝いた。




