#29
村に滞在して二週間が過ぎた。
原田達の怪我は、神官の回復魔法もあり数日で癒えていたのだが、戦闘訓練に原田、本田、島津が加わったために滞在が延びていた。
原田達の家に出入りしていた明智が、本田や島津とも意気投合し、仲良くなってしまったのだ。
神官のスノウにまで懐かれていた。
今では、本田と島津は明智から空手を習っていて、原田とスノウも含めた五人でよく会話をしている。
何故か、本田の剣の指導は俺に押し付けられた。日本刀と西洋の剣では扱い方が全く違うというのにだ。何とか過去の記憶を頼りに教えてはいるが、型とか知らないので難しい。
伊達は、シャーリーから魔法を教えて貰っている。直接的な戦闘よりも性格的に支援向きと自身で判断したのだろう。
真田は訓練の合間に、よくエミリーと遊んでいた。恋人というよりも叔父と姪みたいな雰囲気だ。
そんな感じで皆が打ち解けていく中で、松永だけが俺達と会話をしようとせず、北の勇者チームとだけ会話をしていた。俺達の事を嫌っているのがありありと分かる。
「なぁ、どうにもこの剣は使いづらいんだが、その刀貸してくれないか?」
突然、本田がそんな事を言ってきたので、試しに俺の刀を使わせてみると、本田の動きが見違えるように良くなった。
バスケの動きに慣れている体には、切り返し等がしやすく連続で動きやすい刀の方が合うのだろう。
「それ、やるよ」
「マジかよ!ありがとう、師匠!」
本田にそんな風に呼ばれたのは初めてだった。現金なヤツだ。
しかし、刀を使う事で彼の生存率が上がるなら、良しとする。
彼らはすでに一度死んで、この世界へ来ている。もう一度死なせるのは忍びない。
(新しく作るか)
その晩、俺は新しく愛刀となる刀を作った。
「いつまでここに居るんだ?」
村に来てから約一ヶ月が経ったある日の晩、俺は明智に問いかけた。
「そろそろ動いても良いと思うよ。特訓の成果も出てるし」
真田は、アメリカンスピリッツに火を着けながら言った。
今、俺達は借りている家の食堂に集まっている。真田、明智、伊達、エミリー、シャーリー、俺の六人で、原田達は居ない。
「うーん、そうねぇ。そろそろ動いても良いかと思うけど、どこに行く?」
明智は煙管でトン!と灰皿を叩き、灰を落としながら言った。
明智の煙管も煙管用の刻み煙草の小粋も、俺が取り寄せた物だ。
明智は、昔から煙管が好きだったが、自分で発注はできないので、代わりに俺が発注した。
パイプもパイプ煙草、手巻き煙草用の刻み煙草も発注したが、さすがに手巻き煙草の紙やローラーまでは発注していない。手巻き煙草用の刻み煙草は、煙管で吸う事ができるからだ。
ちなみに、自分用には、ドライシガーとシガリロしか発注していない。
「いきなりラスボス倒すのもアリなんじゃない?」
伊達が煙草を灰皿で揉み消しながら言う。
「山登りかぁ…」
俺は、ドライシガーの灰を灰皿の縁で折るように落としながら言った。
「そんな嫌な顔するなよ」
明智にツッコまれるが、そんなに嫌そうな顔をしていただろうか?
まぁ、実際のところ、山登りは好きではない。
「あの~、夜の王の城は山の上ではなくて、麓にあるって聞いた事があるんですけど…」
エミリーが小さく手を挙げて、遠慮がちに言う。
「良かったな。山登りしなくて済むってさ」
伊達が新しい煙草に火を着けながら、笑っていた。
「じゃあ、大将首狙ってみるかぁ」
明智が煙管に新しい煙草を詰めながら楽しげに言った。
「笑い事ではありません!」
シャーリーが明智に怒鳴った。
当然と言えば、当然だ。
この学級委員タイプの真面目っ子は、俺達の担当になった事自体が不運だろう。
学生時代から、こういうタイプの同級生には迷惑ばかりかけている気がする。
「すまんすまん、そう怒鳴らないでよ」
煙管に火を着けながら言うあたり、明智は全く反省していないだろう。
「とりあえず、山に向かうって事でいい?それで良ければ、明日は準備という事で」
伊達が話し合いを締めた。




