#2
「それで、まさかこのまま放り出すのか?」
「まさか。向こうの言葉すら分からないだろう?とりあえず、言葉は通じるようにしておくよ。能力強化は、君には必要無いだろう。向こうの世界はマナが濃いから、君達の世界よりも魔法や霊能力、超能力と呼ばれるものが強力に発現される。例えば、霊力で作成した武器が、完全に物質化される」
そう言うと、彼は左手の人差し指を立てた。
人差し指は輝きだし、指先に十センチ程の光の刃が現れた。
彼が刃の生えた指を振るうと、彼が右手に持っている葉巻は火の着いた部分から数センチの辺りで綺麗に切断された。
「ね?こんな感じだよ。君にもできるはずだから」
そう言うと、彼は葉巻の切断面に再び着火した。
彼の言葉を信じるなら、たしかに能力的な面では異世界のモンスターと戦うにしても問題は無いだろう。
しかし…
「能力的にはある程度いけるってのは分かった。だが、旅をするなら、せめて資金、物資、足は欲しい」
「ある程度って…。君の力はかなり強力だよ。無差別に暴れまわられたら危険なくらいにね。自覚して自重してくれる事を願うよ」
という事は、戦闘に関してはそんなに心配しなくて良いという事だろうか?
「支度金は向こうの世界に着いたら渡すよ。物資と足は何が欲しい?」
「食料と飲料水、衣服、煙草は欲しい。あと、武器。足は、車が良い。セルシオかクラウンが理想だが、FRでオートマのセダンなら贅沢は言わないよ。それか、レガシーみたいな足回りのしっかりした四駆のワゴンか」
異世界の水や食べ物が体に合うとは限らないし、着替えも欲しい。
異世界に煙草があるとは限らないし、禁煙するつもりも無い。
トヨタの高級車であるセルシオかクラウンを希望したのは、贅沢をしたかったからじゃなく、性能を重視したからだ。
異世界がどんな場所かは分からないが、ファンタジーの世界なら道路は綺麗に舗装されてるとは限らない。
SUVの運転が得意ではないので、SUVを選択肢から外すと、乗り心地の良いセダンか、足のしっかりしている四輪駆動のステーションワゴンあたりが妥当だろう。
「水と食料は向こうの世界の物を摂取しても大丈夫だけど、ある程度は用意しよう。煙草も。衣服と車も何とかしよう。あと、今から君のスマホにアプリを一つダウンロードするから、今後はそれを使って注文してくれ。ブラジャーからミサイルまで何でも揃えるという訳にはいかないがね」




