#23
戦場へ向けて走ってきた馬車から何発もの銃声が聞こえる。
馬車は銃弾をバラ撒きながら、ゾンビの集団スレスレで停止した。
「騎兵隊の到着か?」
村長の娘に訊いてみるが、彼女にとっても予想外の出来事だったのか反応は無い。
馬車を警戒しつつ、明智を援護するために、右手の銃だけでゾンビを撃つ。
馬車からは四人の人影が降りてきた。
さすがに、馬車の周辺までハッキリ見るには明るさが足りない。
馬車から降りてきた内の一人がゾンビどもに向けて、銃を撃ち始めた。
これはマズイ。
「明智、戻れ!」
明智に流れ弾が当たる可能性があるし、こちらに飛んでくるかもしれない。
味方同士なら、お互いの射線に入らないように連携すれば良いが、馬車の奴等の正体は不明だ。
ゾンビどもに攻撃しているからと言って、敵の敵は味方と判断するのは早計過ぎる。
「なんだ、あいつら?」
俺達の近くまで戻って来た明智が、日本刀とグルカナイフを鞘にしまいながら呟き、右腰のホルスターから拳銃を抜いて、マガジンを装填した。
「なんでマガジン抜いてたんだ?」
明智の不思議な行動に、俺は発砲しながら疑問を口にする。マガジンが抜いてあったら、銃を抜いてすぐには撃てないからだ。
「こうしとかないと、暴発するんだよ」
明智はとんでもない答えを返しながら、スライドを引いて、発砲を始めた。
「はぁ?なんだそれ?」
真田は『意味が分からない』という顔をしている。
「なんで、そんな銃にしたんだ?」
「帝国軍の銃だからだよ。じゃないと、軍服に合わないだろぉ」
明智はニコニコと笑いながら、俺の問いに答えた。
明智は、昔から旧日本軍が好きだった。二次大戦中のヘルメットやら水筒やら、軍装品を集めていた。その趣味が、この世界に来てレベルアップしたという事か。
「じゃあ、なんでこんなの持ってるんだよ?」
伊達が、明智のAK47を拾って言った。
「いいんだよ。使いやすいんだから」
明智の答えに、伊達が肩を竦める。
そうこうしているうちに、ゾンビも残り少なくなってきた。
馬車から降りて、銃を撃っている奴以外の三人が、槍やら剣やらを構えて、ゾンビどもの方へ近付いて行く。
「お手並み拝見といこうぜ」
俺は、左手を軽くあげて、明智達に撃つのを止めるように合図した。
村長の娘は、伊達が撃つのを止めるように言っている。
明智と真田は、各々の銃に再装填を始めた。
俺も撃っていた方の銃だけマガジンを換えておく。
「あの子、強いな」
呟く明智の視線の先には、槍を使ってゾンビを倒していく女の子が居た。
顔まではよく見えないが、黒髪で肩ぐらいまでのポニーテール、服装はどこかの学校の制服の様で、黒いブレザーに白いブラウス、黒いロングスカートだった。
流れる様な綺麗な動きで槍を使いこなしている様に見える。的確に、ゾンビの頭を貫いている。たぶん、口を開けたところを突いているのだろう。
それに比べて、両刃の剣を持っている男は、力任せに振り回しているだけに見える。
西洋の剣は、斬るより叩き割るように作られているので、使い方としては間違ってはいないのだが、動きが大きくて荒っぽい。
こちらも学生なのか、学ランを着崩している。髪は茶髪でオールバックだ。
もう一人の男は、髪が長めで、やはり学ランを着ている。剣の男とは違い、キチッとボタンも留めていて、細身の剣を使っている。
フェンシングみたいな動きで、ゾンビを刺してはいるが、なかなかゾンビを倒せていない。脳か心臓という、ヴァンパイアの弱点を破壊できていないのだろう。
「あの子以外、ダメダメじゃん」
真田が呟く。
真田の言う通りなのだが、真田達は大天使から加護を受けているし、銃も使っている。
明智は、もともと空手もやっていたし、道場で武器の扱いも学んでいる。
俺は剣道と居合いをやってたし、玩具とはいえ銃で的を撃つのは得意だった。それに、霊力も使える。
見たところ高校生くらいの彼らと比べるのは酷だろう。若さの強みである体力も、大天使の加護でかなりカバーされているし。
「やっと終わったみたいだね」
最後のゾンビが槍に貫かれて倒れるのを見て、伊達がそう言った。




