#19
「お前!何してんだよ!」
鉄の馬車から降りた僕が見たのは、普段はニコニコしてるサナダさんが泣きながら叫んで、勇者様を殴るという驚くべき光景だった。
何故、勇者様は仲間のはずのサナダさんに殴られているんだろう?
どうして、サナダさん達は泣いているんだろう?
「何すんだよ~?痛いだろ?」
勇者はは大して効いてない様子で、サナダさんに殴られた左頬を擦りながら、微笑んでいた。
「お前が勝手に死ぬから悪いんだろう!」
サナダさんが再び叫んだ。
「なに断りも無く逝ってるんだよ」
ダテさんも怒っている。
でも、勇者様が死んでるって、どういう事?
勇者様は目の前に居るのに…?
「いやぁ、死んじまったもんはどうにもならんよ」
勇者様が頭を掻きながら、そう言った。
勇者様自身が死んでいる事を認めた。
「帰ろう、明智。俺達は、お前を元の世界に連れて帰るために、迎えに来たんだ」
タケダさんが勇者様に右手を差し出した。
勇者様が死んだのは、元の世界での事なのだろうか?
「ダ~メだよ。俺は勇者として呼ばれたらしくてさ、吸血鬼を倒さなきゃいけないんだって。そうしないと、向こうの世界で生き返れないから」
勇者様は困ったように、そう言った。
やはり、勇者様は元居た世界で死んでいたようだ。
死者の魂が異世界から勇者として召喚される事がある。
勇者様はそうなんだろう。
話の内容からすると、サナダさん達は元の世界で死んでいなくて、死んでしまった勇者様を連れ戻しに来たって事だよね。
(異世界まで連れ戻しに来るなんて、スゴいな)
僕にも、そんな友達が欲しい。
この人達みたいに、大人になってもずっと友達で居られるような。
「だから、そんなの手伝うから。とっとと吸血鬼を片付けて帰れば問題無い」
ダテさんがニヤッと笑う。
「だね」
サナダさんも笑う。
「俺達は、勇者様のお仲間らしいから」
タケダさんも笑った。
「じゃあ、ロクデナシで鬼退治するかぁ!」
勇者様が豪快に笑った。




