#17
「ヤツが見付かったってさ」
宿の食堂で朝食を食べていると、サナダさんが不思議な道具を取り出して、ヒラヒラさせながら言った。
「で、どうするって?」
すでに食べ終えているダテさんが、コーヒーを飲みながら尋ねた。
「ヤツが居る村へ向かうって。昨日の街から少し北にあるってさ」
サナダさんは、パンの最後の一欠片を食べるとこだ。
僕のお皿には、まだパンもスープも半分くらい残ってる。
「じゃあ、ご飯食べ終わったら出発しよう」
ダテさんが、ちらっと僕の方を見て言った。
僕が朝食を食べ終わるのを待って、すぐに出発し、今は鉄の馬車で街道を北に向かっている。
「もうすぐ昨日の街だけど、昨日の今日で大丈夫かね?」
御者席のダテさんが、短くなった煙草を灰皿に捨てながら呟いた。
昨日の夜、僕達は街の周囲を通る道で、ゾンビの集団と出会ったからだ。
「ゾンビは昼間は動けませんから、屋外なら大丈夫だと思いますよ」
両手で前の座席に掴まって、体を乗り出すようにして二列目のイスに座っている僕は、前に座る二人に向かって言う。
「太陽の光を浴びると灰になるって話だよね?実際、どうなの?」
ダテさんが振り向いて、僕に尋ねてきた。
「太陽の光を浴びると、煙を上げながら苦しんで灰になるって、仲間から聞きました」
ゾンビと戦った事があると言っていた神官の男から聞いた話を伝えた。
僕は神官としては新人なので、ゾンビを見たのは昨日が初めてだ。だから、昨日は何もできなかった…。
その後、特にゾンビと出会う事もなく、順調に進んで行った。
僕は途中で少し眠ってしまったけど。
新しく着たタケダさんからのメッセージに従って、馬車は脇道へ入って行く。
「俺達がもうすぐ村に着くって、伝えてくれない?」
ダテさんが隣に座るサナダさんに向かって言った。
「あ!ヤバッ!メッセージ返信してない」
どうやらサナダさんは、タケダさんから着ていた今までのメッセージに返信していなかったらしい。
「まぁ、いいんじゃない?もう着くし」
ダテさんは、あまり気にしていないようだ。
「じゃあ、着くって送っとくわ」
サナダさん不思議な道具を操作していた。
そうこうしているうちに、村が見えてきた。木造の家が集まって建っていて、周りには畑がある。
馬車の速度を落としながら、村に近付いて行く。
「ようやくご対面かな」
村に入ると、ダテさんがニヤッと笑いながら言った。
「あれじゃない?」
サナダさんが指差したのは、たぶん村長の家。
その家の前に、見た事の無い黒い鉄の馬車が停まっている。僕達の乗っているものと形は似ているけど、二回りくらい大きい。
ダテさんが、黒い鉄の馬車に並べるように、僕達の乗っている馬車を停めたのと同時に、家のドアが開いた。
村長らしき老人を先頭に、タケダさん、アリシア様の順番で出てきた。




