#16
村長の家の扉から出てきたのは、白髪に白く長い髭の老人だった。彼は、村長だと名乗った。
村長は、俺達を家の中へ招くと、応接間と思われる部屋に案内した。広さは六畳くらいで、二人がけの古いソファーが一組とテーブルだけの簡素な部屋だ。
「ようこそおいでになりました、勇者様のお供の方。もう少しで、勇者様達はお戻りになりますから、ここでお待ちください」
村長は、俺達に座るように勧めると、部屋から出ていった。
今のうちに、真田と伊達に脇道へ入る目印をメッセージで伝えておく事にする。
「ヤツは、ここに居るんじゃなかったのか?」
スマホでメッセージを打ちながら、アリシアに尋ねる。
家の前でのアリシアの言葉から、てっきり家の中に目的の人物が居ると思っていた。
「念話でここに入るように言われたので、私もそう思ったのですが…」
アリシアも俺と同じ勘違いをしたみたいだ。
「じゃあ、念話でどこに居るか聞けないのか?」
確実であろう方法を提案してみる。
「すぐに戻るから待ってて欲しいと言われました」
そうなると、ここで待つ以外にない。
メッセージを打ち終わったので、スマホをしまい、仕方なくソファーに腰かける。
アリシアは俺の隣に座った。
「失礼します」
言葉と共にドアが開いて、女の子が入ってきた。
赤茶色のロングヘアーをポニーテールにしていて、気が強そうな目をしている。服装はブラウスにロングスカート、ブーツを履いている。
両手でお盆を持っていて、カップが二つ乗っている。
「どうぞ」
カップは、俺達の前に一つずつ置かれた。
「どうも」
カップの中を覗くと、濃く淹れた紅茶のような深い赤茶色の液体が入っていた。湯気は立っているからホットだろう。
「ありがとうございます」
アリシアは笑顔でそう言うと、カップを手に取り、一口飲んでいる。
(この子の前で、どんな味だとは聞けないよなぁ…)
俺がそんな事を考えているうちに、女の子は部屋から出て行った。
「このお茶、どんな味なの?」
早速、アリシアに聞いてみる。
「あなた達の世界で言えば、中国茶に近いですかねぇ」
中国茶なら飲めそうだ。ドクダミ茶とか薬草っぽいものは遠慮したい。紅茶なら砂糖が欲しい。
試しに一口飲んでみる。
(不味くはない。色が濃い割りに薄味だし)
カップをテーブルに置くと、ポケットの中でスマホが震えた。真田か伊達からメッセージだろう。
返信が遅いとは思うが、起きたのが遅かったのかもしれない。彼らが街へ着いたのは、俺達が寝た後だったのだから。
スマホを操作して、メッセージを確認する。真田からだ。
『すまん、送信し忘れた。もうすぐ着く』
喜んでいいのか、怒っていいのか分からない内容だった。
アリシアにメッセージが表示されたままの画面を見せる。
数秒間、画面を見た後に頷いたので、読み終わったのだろう。スマホをしまう。
(ようやく全員集合か)




