#12
奮戦の甲斐あってか、ようやくゾンビの数が五体まで減った。犠牲も出したが、あと一息だ。
その時、さっきゾンビにやられた髭面の男が起き上がって、仲間に向けて銃を撃ち始めた。
「なに!?」
いきなりの事に理解が追い付かない。
「彼はゾンビになったんです」
後ろから近付いて来たアリシアが、そう告げた。
ゾンビになったのは理解できる。ゾンビに咬まれて死んだのだから。理解できないのは、そこじゃない。
「ゾンビになったからって、仲間を撃つか?さっきまで一緒に戦ってたのに」
「ゾンビは他のヴァンパイアと違って、本能しか無いんです」
アリシアが悲しげに答えた。
一緒に戦っていた仲間を、本能的に敵と認識して攻撃してるのか。
映画等でも吸血鬼になった人間が、いきなり咬みつくシーンはあるが、あれは吸血欲求によってだ。
銃で撃っているという事は、それですらない。
「うわぁ…!」
髭面の男の仲間の一人が、彼の頭を叫びながら撃ち抜いた。
さっきまでの仲間が敵となり襲ってくる。
これが吸血鬼との戦いか…。
今、戦っているゾンビも、かつては人間だった存在だ。
「他のヴァンパイアは、ヴァンパイアになっても自己が残ります。しかし、ゾンビにされてしまった者は魂が縛られ、苦しみつづけるのです。安らかな眠りを与える事が、彼らの魂を救う唯一の方法なのです」
アリシアの言葉に導かれるように、俺はゾンビ達に狙いをつけて、引き金を引いた。
「せめて、安らかに眠れ」
最後の一体の頭を撃ち抜いた後、俺は十字を切った。
「さっきのヴァンパイアの魔力の反応は?」
ゾンビとの戦闘が終了したので尋ねてみたが、アリシアは首を横に振った。
「戦闘中に反応が消えました」
「という事は、もうここには居ないか、今は戦う気は無いって事か」
今のうちに銃のマガジンを交換しておく。
「とりあえず、昨日の街へ向かおうか」
俺は、そう言ってアリシアへ笑いかけると、アイテム一覧からセルシオを取り出して、運転席へ乗り込んだ。
「悲しい笑みですね。辛そうです」
助手席に乗り込んできたアリシアは、心配そうにそう言った。
「そのうち馴れるさ」
そう返して、車を発信させる。
「馴れない方が人としては正しいと思います」
「かもしれないが、馴れなきゃいけないだろ。戦い続けるには。友達を連れて帰らなきゃいけないんだから」
アリシアの方を見ずに答えて、車の窓を開け、ビリガーエクスポート マデューロに火を着ける。
(美味くはないなぁ…)
一仕事終えた後の一服は、爽快では無かった。




