お礼
な、なんだとGD☆GD☆指数が大幅に上昇しているだと!?
私立佐々雅高等学校。偏差値は平均並みだがこの高校は人気だ。
主に学校の行事がとにかく多い。1年から京都に二泊三日。2年で沖縄に、3年で北海道と旅行がすごかったり、毎月行事があったりととにかくすごい。そのくせ学費が安い。土日休み。単位も緩い。学生にとってはサイコ―の空間だろう。ちなみに私は家から近いという理由で入学した。結衣に誘われたのもあるが。
2年B組。
「結衣、昼休みだよ。お昼、新堂君を誘ってみたら?」
「え、ななななんあなんで新堂きゅんぎゃでてきゅるのしゃ!」
見事にろれつが回っていない。
午前中の授業は全部ボーっとしていた結衣だ。十中八九新堂のことを考えていたのだろう。
「あ、私は真也にお弁当渡しに行くのとちょっと用事があるから。がんばれ結衣」
と私は自分のお弁当と小銭入れを持って足早に教室を出た。
まず弟の真也に弁当を持っていく。
A組の扉を開き愚弟を探す。窓際にいることを確認し、
「せいっ!」
顔面めがけて投げた。
弟のくせして無駄にカッコいいので毎日こうやって弁当を投げ渡している。
今日は手を精一杯伸ばさないとどかなくらいの所に。
別に自分の前世の身長が弟より低かったとかじゃないし。
そして愚弟は無駄にかっこよく滑り込んでキャッチする。さすがサッカー部のエース。背中の10番は伊達じゃないか。
ちっ、と軽く舌打ちをしてみる。
「ひでえよ姉さん!」
駆け足で寄ってくる愚弟。
「黙ってくれるか愚弟」
身長さ約十センチ程さのある弟の顔面をつかむ。
手を少し上にあげれば余裕だ。
「い、痛い、ブレインクローはやめてっ!」
弟曰く、アイアンクローってゆうのはある一人の選手の必殺技の名前であって通常はブレインクローって言うんだ。と言われたことがあった。まぁ、どうでもいい。
「このクラスにいる深雪一哉がどこ行ったか知ってるか?」
「お、屋上なはず。俺アイツとそれなりには仲がいいから」
必要な情報が入ったので手を離してやる。
廊下の自販機で缶コーヒーを買って屋上に行く。
屋上に行くと一人端っこで弁当を食べてる少年がいた。と言うか深雪だ。
深雪の前に缶コーヒーを置き、
「今朝はありがとう、深雪君。私にはお礼と言ってもこれくらいしかできないけどよかったらどうぞ」
彼は箸を途中でとめ、驚きの目で私を見る。
「そんなに見つめないでくれ。照れる」
わざとらしく頬に手を当て冗談交じりに言ってみる。
あ、端からウインナーが落ちた。お弁当箱の中に。
依然と彼は固まったまま。
「どうしたんだ。明らかに私は新堂に惚れて昼休みには会いに行くだろう周りのことはよく見ない、恋は盲目的な言葉を私に言おうと思ってたみたいな顔は」
ちょっと長ったらしい説明。
「あんたには俺の心が見えてるのか?」
「いや、君は表情に出やすいタイプなんだよきっと」
少し笑いながらからかってみる。
シリアスな空気は苦手だから。
「主人公はただ無様に負けただけで倒したのは君だろう?なら君に礼をするのは人間として当たり前のことだ。まあ、これくらいしかできないが」
そもそもあんな無駄に完璧すぎる奴は好きじゃないんだ私は。と、付け足す。
そして数秒の沈黙があった。
「ぶ、はははははっ!」
ゆっくりと弁当を横に置き腹を抱えて笑う深雪。
弁当をしっかりと置いてから笑うというのは本能的に糧を必要としたのだろう。
「急に笑わないでくれ心臓に悪い」
笑いすぎて涙が出たのかメガネを外す深雪。
「あんた名前は?」
「八十一薫。ジミたがり屋だ」
目立つのは好きじゃない。中学の時は少し荒れてたから。
「知ってると思うが俺は深雪一哉。気軽に一哉って呼んでくれ」
立ち上がりこちらに手をのばす深y――いや。一哉。
「ああ。それなりに信頼できる人が増えるのはいいことだからな。私のことも気軽に薫と呼んでくれ。それと普通にカッコいいと思うぞ一哉は」
伸ばされた手を掴んだ。
没ネタ① 深雪を『ミッキー』と呼ぶ。
② 最後のセリフの「私のことも気軽に薫と呼んでくれ」を、「私のことも気軽にかおるんと呼んでくれ」にしようとした。
言い訳。 主人公の口調が定まらないのはデフォルトです。標準装備です。元男と言うこともあるので若干男っぽい口調になったりならなかったり……