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もやもやと梅雨

感想ありがとうございます。

あの気になる発言から早くも一ヶ月がたった。

 今は梅雨に入り、今日も雨が降っている。

 雨が降っているということで屋上の入り口近くでご飯をいつものように食べていた。

「なぁ、今週の土曜日暇か?」

「多分、大丈夫」

 6月9日、土曜。

 私の誕生日だ。雅也は4分と言う微妙な時差で6月10日生まれ。

 去年と一昨年は亡くなった両親に変わって祖父母が私たちの誕生日を祝ってくれた。

 帆父母はとある財閥のお偉いさんで、母の兄にあたる人が今アジアを代表する大企業の取締役だとか。最初はその人たちの家に引き取られる予定だったが、自分たちの家を離れたくないという理由でこの町に残してもらった。

 その祖父母から毎月生活費をもらっている。

 誕生日は色々なものをもらっていた。オルゴール、竹刀、バイオリン、サンドバック……etc。去年はドレスをもらった。祖父の誕生会(有名人とかが集まるところ)に行ったりもした。お見合い持ちかけられたときはまだ父が亡くなっておらず、その人をボコボコにしていたのは記憶に新しい。

 何故そんなことを聞いて来たかと言えば、

「まだゴールデンウィークの約束果たしてもらってなかったじゃねえか」だ、そうだ。

 なかなか話を持ちかけないので話そのものが無くなっていたと思っていた。




 土曜の朝、起きて朝ご飯の準備をしようとリビングに入ると、

「happybirthday!姉さん!」

 真也がクラッカーを鳴らして誕生日を祝ってくれた。

 テーブルには朝食とショートケーキが置かれており、本当に簡単なものだった。

 大きくないこれくらいのもので十分である。

「ありがとう、真也。でも先に言うことない?」

「…?」

「おはよう」

「あ!おはよう、姉さん」

 すっかりと挨拶を忘れている。

「ご飯にしようか」

「そうだね。これ、俺からの誕生日プレゼント」

「ありがとう」

 ラッピングされた長方形の箱をもらった。

「開けてもいい?」

「もちろん!」

 ラッピングを丁寧にはがして箱を開けると、イヤーカフとネックレスがあった。

「ありがとう、真也」

 思い切り抱きついておく。

 久々のスキンシップである。

「ちょ、姉さん!?」

「お爺ちゃんとお婆さんはいるけど、父さんと母さんの血が流れてるのは真也だけだからさ……たまには姉弟だな、って実感したいんだよ」

「姉さん……」

 5分ほどそのままでいた。

 そして立ち上がり、

「ご飯食べよ」

 



 一哉と待ち合わせの1時間前、お爺ちゃんから電話があった。

『薫、誕生日おめでとう』

 低音のバスボイス、そこからは威厳が感じられる。

「ありがとうございます、お爺様」

 相手は大財閥のお偉いさんなので、敬意をもって接する。

『………母さん、薫が反抗期に入った!昔はおじいちゃんお爺ちゃんと可愛かった薫が反抗期に入った!』

 故野林乾二郎、71歳。故野林財閥を自身の手で世界に通用するまでに会社を築き上げた人。未だに若々しい反応を取り、孫に尋常じゃなく甘い人である。

「嘘、嘘だから大声あげないでお爺ちゃん。ちゃんと言葉遣いが身に着いたってことで納得して」

『うむ、そうか。さすが儂の孫。これならいつお嫁に出しても大丈夫だ』

「変なことで嫁ぎ先とか決めないでくださいよ?自分が酔っぱらった勢いで一番最初に生まれてきた孫を結婚させようとか言う変なこと決めてないよね?」

『ギクッ、な、なんで薫はそんな所で母さんに似ているんだ。まったく嫌な遺伝だ』

「…遺言状ってどうすれば残せますか?お爺様」

 これは結構心が折れそうになった。数少ない母さんに似たところなんだから。

『冗談じゃよ、冗談。最近の若い者は冗談が通じなくて困る』

「おばあちゃんに交代で」

『ま、まて早まっちゃいかん、薫と真也と雅だけは別だ!』

 雅と言うのは故野林雅と言って私の従姉弟にあたる奴だ。歳は同じだが私の方が1ヶ月ほど生まれたのが早い。

「…では、その許嫁に当たる人には断っていただいてください。お婆ちゃんには後で電話すると言ってください」

『……一応、断ってみるが薫は今日用事でもあるのか?』

「友人と隣県の遊園地に行ってきます」

『ほう、幼馴染の沙月ちゃんとかい?』

「違います。隣のクラスの男子です。では、急いでいるので」

『へっ?ちょっと待て、薫、詳しk――――【ツーツーツー】』

 早く着替えて集合場所に行こう。

 こうして爺さんと婆さんが勘違いする要素を残し、連絡路は絶たれた。

 電話が終わった直後のこと、

「か、母さん、か、薫がついに男子とデートを!それで許嫁も即断った!」

「あらあら、薫もそういうお年頃なのかしら」

「しかも遊園地と言うことはかなりのラブラブだ!」

 そこに一本の電話があった。

『すみません。今日カオルさんの誕生日と言うことでプレゼントを渡しに行きたいのですが』

 それは薫の許嫁からの連絡だった。

 婆さんはすんなりと、とある県の遊園地行けば会えると伝え、呟いた。

「もう、薫さんも隅に置けないわね♪」

 

――――――――――――――――――――

エピローグ風です。↑婆さん絶対楽しんでる!


数話前までのがゴールデンウィーク編とするならば薫誕生日編ですね。


多分次回新キャラ登場!

 


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