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きっとこれは――

ちょっと一哉視点が入りまーす。


感想ありがとうございます。

目指せ完結、目指せ夏休み編、水着が私を待っている!


(作者の細やかな願望)

 初めて二人で合わせて歌ったとは思えないほど完璧だった。

 それ以上に私の気持ちを占めているものがあるとするならば「心地いい」「楽しい」「歌い続けたい」などの感情があふれている。

 今までは「好きだ」「満足してもらえるような歌を」って言う思いで歌っていた。

 けれども今は違う。

 自分が本当に気持ちがいいと思える、この気持ちを声に乗せて伝えたい。

 そんな気分だ。

 そしてライブが終わった時のことだ。

「薫ちゃん、すごく顔がスッキリしてるわよ」

「はい。このままずっと歌い続けたいとすら思えます」

「それがうちの利益に入ったら、わんさか!ひゃっほい!なんだけどな」

「……ここにもう来ませんよ?」

「ごめん、ごめん。今日の分それなりにしておくから」

 そう、なんだか今日はいつもより人が多かった。

 いつもが30人前後なら今は60人前後およそ倍。

 曰く、CDを聞いていたらファンになった。ネットですごいリスペクトする人がいたので聞いてみたくなった。友達から聞いてファンになった。など。

 とてもうれしい状況である。

 そのおかげでアンコールにも出てしまった。

 けれども自分的には申し訳ないがそこまで有名になりたいわけじゃない。

 今は確実に一言一言に気持ちを込めた今の曲を聴いてもらいたいと言うだけだ。

「きゃっ!?」

 急に首筋に冷たい感触が伝わってきた。

「おつかれさん」

「ありがとう、一哉。今日は本当に助かったし、すごく気持ちよく歌えたよ」

 一哉はきょとん、とし直ぐに笑みを浮かべ、

「ああ、CD越しじゃ分からない心地よさがあったぜ」

「今日は本当に驚くくらい気持ちよく歌えたんだ、今の幸せな気持ちを言葉に乗せることができたんだから少しくらいは心に響いてほしいよ」

「ああ、聞いてるこっちまでいい気分になって、ついつい調子に乗っちまった」

 二人で顔を見合わせ笑いあう。

 こんな幸せな時間が一番好きだ。




 side : 深雪 一哉


「ありがとう、一哉。今日は本当に助かったし、すごく気持ちよく歌えたよ」

 なんだか気恥ずかしい気分になりながらもなんとかお世辞を返す。   

「ああ、CD越しじゃ分からない心地よさがあったぜ」

「今日は本当に驚くくらい気持ちよく歌えたんだ、今の幸せな気持ちを言葉に乗せることができたんだから少しくらいは心に響いてほしいよ」

 今、俺はどうしようもなく緊張していた。

 



 ――初めて会ったのは四月の中盤。

 主人公しんどうに助けられた2人の少女。

 一人は確か沙月結衣、茶髪の明るそうな小動物のような可愛さのある美少女。

 もう一人が長い黒髪の目立たないそうな前髪の長いメガネをかけた少女。名前が判らない。だがどっかで聞いたことのある特徴だった。

 この二人はきっと新堂ラバーズに入っていくのだろうと思っていた昼休み。

 ハッキリ言って地味な方の黒髪の少女が俺の前に来て、俺の前に缶コーヒーを置き、

「今朝はありがとう、深雪君。私にはお礼と言ってもこれくらいしかできないけどよかったらどうぞ」

 思わず弁当を食っていた手を止めてその少女を見ていた。

 今いる屋上に風が吹き、思わず顔を凝視してしまった。

 さっきは地味だの言ってたが顔を隠されているだけで美少女に分類され流部類の整った顔立ちだった。

「そんなに見つめないでくれ。照れる」 

 わざとらしく頬に手を当て冗談交じりに言って来る。

 髪をちゃんと整えてメガネを取ったらどれほどのものか気になった。

「どうしたんだ。明らかに私は新堂に惚れて昼休みには会いに行くだろう周りのことはよく見ない、恋は盲目的な言葉を私に言おうと思ってたみたいな顔は」

「あんたには俺の心が見えてるのか?」

 なんだか今までないタイプの子だった。

「いや、君は表情に出やすいタイプなんだよきっと」

 苦笑いをしながら言われる。

 普段はオタクオタクいわれてたりするので少し気分がよかった。

主人公しんどうはただ無様に負けただけで倒したのは君だろう?なら君に礼をするのは人間として当たり前のことだ。まあ、これくらいしかできないが」

 そもそもあんな無駄に完璧すぎる奴は好きじゃないんだ私は。と、付け足す。

 そして数秒の沈黙があった。

「ぶ、はははははっ!」

 ゆっくりと弁当を横に置き思わず腹を抱えて笑ってしまう。

 弁当をしっかりと置いてから笑うというのは本能的に糧を必要としたのだろう、などと自分の中で自己完結をし、

「急に笑わないでくれ心臓に悪い」

 笑いすぎたので涙が出たのかメガネを外す、伊達メガネなんだがこれが案外落ち着くんだ。レンズが度無しだけなのでそれなりのお値段はしたが。

「あんた名前は?」

「八十一薫。ジミたがり屋だ」

 ジミタガリ屋ってなんだよ、と心の中でツッコミを入れておく。

 どうも話しやすいと思ったら八十一、つまり真也の兄弟だったてことか。

 親友の兄妹…

「知ってると思うが俺は深雪一哉。気軽に一哉って呼んでくれ」

 こいつとなら仲良く笑って行けるような気がした。

「ああ。それなりに信頼できる人が増えるのはいいことだからな。私のことも気軽に薫と呼んでくれ。それと普通にカッコいいと思うぞ一哉は」

 立つ際に出した手を掴まれた。




 その後、自分のお気に入りの曲を語ったり、お袋と仲が良い人だったなどと驚くことがたくさんあった。

 けれども一番驚きだったのが今までで一番仲の良かった異性が憧れの人だったということだ。今思えばあんなことを本人の前で堂々と語っていた自分が恥ずかしくなる。

 先ほどまで全力で歌っていた彼女の頬には汗がにじんでおり、意地悪で冷たい缶ジュースを首に当ててやったりもした。

 今は俺の前でにっこりと綺麗な笑みを浮かべている彼女。

 それを自分以外の人に向けられると思うと嫌な気持ちになる。

 

 嗚呼、きっとこれは恋なのだろう。アノ時以来の、

 

 憧れじゃない、自分の素直な気持ち。

 彼女が去ったライブ会場で、

 俺は明日からどうやって彼女に接していいかわからなくなっていた。

勢いで書いてしまった。

反省はしてないが、な。

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