その壱拾参
「そうだな。全く以てそうだ」
やはり、溜息を付き仁兵衛は途方に暮れた。
「【門】であることは間違いなさそうなんだがなあ」
二本の柱を行ったり来たりしながら、慶一郎は首を傾げる。
「さてはて、どうやったらこの先に進めるのやら。クラウスなら何とかなるのかね、これ?」
真顔で仁兵衛はぽつりと呟いた。
「さてなあ。初代様が絡んでいるなら、これの製作者は知識神ウルシムか、その嫁の魔王ザーハムラームか。力押しで何とかするなら、二人の息子の南の魔王様でも怪しいところか……」
真面目な顔で慶一郎は考え込んだ。
「まあ、居ない相手に頼るのは馬鹿馬鹿しいから、二人でそれらしい合言葉を探していくか」
そう仁兵衛が提案した時、妙なる弦の調べが聞こえてきた。
「なんだ? こんな時に管弦の宴でもしている酔狂な奴が居るのか?」
突然の事態に、呆れた口調で慶一郎は嘯いた。
「待て。この音は扶桑の物ではなく、むしろ──」
言葉を選んで続けようとしていた仁兵衛は、目の前で起きている出来事を見て絶句する。
「活性化してやがる?!」
慶一郎は驚きの声を上げた。
「罠か?」
怪訝そうな表情で仁兵衛は呟く。「……どちらにしろ、やることは変わらないか」
「然ういう事だな」
にやりと笑い、慶一郎は背中に背負っていた弓を弓手に携えた。
「征くか」
瞬時に迷いを捨て去り、慶一郎の返事を聞く前に柱と柱の間に生まれた光の渦へと仁兵衛は身を投じた。




