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御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
第五章 師弟
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その壱拾弐

「さっきも云ったが、現状師匠が切れる手札の中で最高の役を切っている。あの人はあれで予想外の一手を打てない人だからな。少なくとも師匠は【奥之院】に居る。俺達を誘い込む罠かも知れないが、師匠さえ抑えれば、この中に上様が居なくともこちらに勝ち目が見える。どちらにしろ、【奥之院】に行かねば始まらぬよ」

 慶一郎は冷静に状況を推察して見せた。

「そうか。もう一つ聞いておきたいことがある。あんたの師匠は、俺達が来ると読んでいると思うか?」

「間違いなく。準備万端、入り口で待ち構えているだろうさ」

 仁兵衛の問いに確信を持った口調で慶一郎は断言した。

「そうか。弟子であるあんたが云うなら、そうなんだろうな」

 疑うことなく、仁兵衛はそれを受け入れ、柱を丁寧に手で触る。「勝てるか?」

「さて。そいつは自信ないな。なんやかんや云って、今では兄者に劣るとは云え、間違いなく東大公家屈指の兵法者な訳だ。今の俺で手が届いているかは怪しいところだな」

 多少考える顔付きを見せ、慶一郎は苦笑した。

「助太刀はいるか?」

 珍しく自信を感じさせない発言を聞き、真面目な顔で仁兵衛は提案する。

「それこそいらんお世話だ。俺が俺の力で勝たないと意味が無い。それに、今回は別にあの爺をどうにかしなくとも、上様を救い出せばそれだけで勝ちなんだ。お前さんは無理せず、上様を救い出し、どうにか爺を出し抜いて逃げれば良いだけさ」

 慶一郎は強い意志を込め、力強く拒絶してきた。

「気軽に云ってくれるな。当主格を数人出し抜かねばならないというのに」

 低い声で笑いながら、仁兵衛は幾分か楽しそうに呟く。

「何、お前さんだからこそ頼めるってもんだよ、相棒。他の奴なら頼んだところで無駄だろうしな」

 再び柱を一回りして、慶一郎は溜息を付く。「なんと云うか、もう少し真面目に冒険者をやっているべきだったか」

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