表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
第五章 師弟
85/185

その六

「何、通って良いって云うんだ。(まか)り通ろうぜ」

 あっけらかんとした表情で慶一郎は返事をすると、扉を開け放ち【奥之院】があるとされる場所へと足を踏み入れた。

 暫し中と長谷川を代わる代わる見ていた仁兵衛だが、意を決したのか、長谷川に一礼してから中へと入っていった。

「長谷川さん、何で見逃したんですか!」

 一方、若い男は長谷川に食って掛かっていた。

「主筋の方を守るのが我らの使命であろうが」

 晴れ晴れとした表情で、若い男を諭す。「生きている内にあの様な貴人と出会えるとは思わなんだ。何と表現して良いのか、武骨な儂には言葉が思いつかぬ」

「御乱心召されたか?!」

 若い男は声を荒立てる。

「ふむ、お主、雷文公様の逸話は知っている方か?」

 何かを悟ったかのような静かな心境で長谷川は若い男に質問した。

「え、それなりに、ですが」

 怖ず怖ずと若い男は口を濁すかのように返事をする。

 初代東大公頼仁の逸話は山のように有り、全てを網羅するとなれば一生涯、話の収集に従事してやっと覚えられるかどうかといったところである。彼が知る限り、長谷川喜助はかなり詳しい方であり、東大公家への勤王の意志も又それに比例して強い人物であった。

「そうか。それでは、山小人(ドヴェルグ)より献上された三振りの武具の話は知っておるかの」

「まあ、その程度ならば」

 長谷川の問い糾してきた内容が初代様の中でも一二を争うほど有名な逸話で有り、彼自身も武人としてその武具に興味を有していたため、人並み以上に知っていることに安堵を覚える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ