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御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
第五章 師弟
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その四

 暫し悩んだ後、

「良かろう、変な動きはするなよ。儂を刺してもこやつが動くでな」

 と、警告した。

「ははははは、この原慶一郎、同輩を騙し討ちにする了見など持ち合わせぬ。御安心めされよ」

 朗らかに笑い、腰の物を二振りともその場に捨てると、静かに歩み寄った。

 警戒心溢れる表情の儘長谷川はそれを見て受け入れた後、慶一郎の耳打ちを密やかに聞いた。

「まさかッ?!」

 全てを聞き終わった後、驚きの表情で慶一郎を見据える。「謀ってなどおらぬだろうな?」

「これは手厳しい。されど、俺がその様な虚言を催す男でないことは長谷川殿も御存知のはず」

 にやりと笑い、慶一郎はどんと胸を叩いた。

「……良かろう。それを示せたのならば、立ち退こう」

「長谷川様ッ?!」

 急な展開に、長谷川と共に入り口の守りに就いていた男が驚きの声を上げた。

「黙れッ! 儂に二言はないわ」

 神妙な顔付きで長谷川は男を制す。「それに、この男の言が真実ならば、話が根本から変わってくるのだ。今はそれを確かめる方が先決よ」

「納得して頂けたようで。相棒、ちょっときてくれ」

 顔だけ後ろを見て、慶一郎は仁兵衛を呼び出した。

 展開に付いていけない仁兵衛だったが、慶一郎の言うことを疑う気にはならずに正直に隠れていた場所から姿を現す。

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