表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
間章 扶桑人
8/185

その六

「愚直なまでの律儀さも、千年近く続けば信用という名の武器となる、か。そこまで計算していたのならば、大したものだな」

 深々とアルは頷いた。

「故に、魔王絡みの事件と出くわした時、他の陣営に邪魔されることなくこれに当たることが出来る。二人の魔王への強い恨みや憎しみを覚えますね」

 クラウスの言に、

「あの二人は然ういう感情とは無関係とまでは云わないが、超越しているところがあった気がするがな。結果として、そう見られるのも致し方あるまいが」

 と、アルは寂しげに首を横に振った。

「そうなのですか? 【組合】に関わっている扶桑人を見ていると、魔王に対する拭えないぐらいの強い何かを感じますけどねえ」

「まあ、昔話を通して強い(いきどお)りや敵愾心(てきがいしん)を抱かせ続けているのは否めないな。それこそ麻のように乱れた中原の情勢などほっぽって、魔王絡みの事件や事象の解決を優先させるぐらいには」

 得心行かないクラウスに、アルは肌で感じていることを思ったままに話す。「そこに、初代と二代目の政治的な意向がないとは云い切れんがな」

「成程。そう考えると、今の中原の基礎と云うべき制度を発布したウルシム様と並ぶかそれ以上の政治家という史書の評価は正当なのでしょうけど……」

「他の面が目立ちすぎて、世間一般にはそう思われていない悲劇の英雄だな。どちらにしろ、誰にも真似が出来ない事をしでかした不世出の英雄だよ。小太刀の柄糸の件を取ってもそうであろう?」

「ああ、確かに。扶桑人を見て武人かどうか、腕が立つかどうか、どう見られているかどうかを知っていれば見極められるのは便利ですよね、役目柄」

 アルの言に強く頷きながら、クラウスは、「偶に仁兵衛君みたいに敢えて付けていない人もいますけどねえ」と笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ