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御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
第四章 潜入
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その弐拾五

「そこまで外道ではないと信じたいがね」

 仁兵衛は苦笑する。「そういえば、貴公は【奥之院】を知っているのかね?」

「実在することは知っておりまするが、場所までは」

 男は低い声で答えた。

「在るのは確かなのか」

 多少驚きを含んだ声で、仁兵衛は男に問い糾した。

「それは。使命と裏表の関係なれば」

「……使命と? 意外な話が聞けたな」

 慶一郎が興味深そうに呟く。

「不思議ではないかと。【旗幟八流】は本来この世ならざる者を斬るための刃なれば。我ら忍びの者はそれを補佐する役目を頂いておりまする。そして、その役目に誇りを抱いておりますれば」

 静かな口調とは裏腹に、怒気を篭めた眼差しで鳳凰殿を見据えた。

「くくくくく、いやあ、面白いねえ。実に面白い。俺達表芸の侍が誇りを忘れ、裏に生きる忍びの方が大義のために死する覚悟を有す。雷文公がこの世を見ていたら何と思われるか」

 気を抜けば大笑してしまいそうな心持ちをぐっと堪え、慶一郎は腹を抱える。

「その一人が自分の師匠だと云うことはどうなんだ、友よ?」

「ああ、あのクソ爺には引導を渡したかったから、丁度良いのさね。まあ、兄者には悪いが、一門の恥を何時までも晒しているわけにもいくまい。先生に対抗意識を持ちすぎて、退き時を誤ったんだ。過ちは正さなければ、な」

 凄絶な笑みを浮かべ、溢れ出んばかりの闘気を押さえ込む。

「そうか、分かっているならば良し。後は、目的地まで気付かれずに向かうことだが」

 考え込む仁兵衛を見て、

「なるようにしかならんだろう」

 と、晴れやかな口調で慶一郎は笑い飛ばす。

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