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御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
第四章 潜入
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その六

 壬生狼。

 中原諸国では狼人(コボルト)と呼ばれる種族の扶桑に於ける蔑称(べっしょう)であったのだが、まだ扶桑にいた当時の雷文公が誉め言葉として使ったことにより、転じて扶桑系の狼人、特に彼らが先祖代々伝えてきている天浪神刀流の使い手を指す敬称となった。

 元々、扶桑にいた当時は時の帝との契約により、首都の治安を守る為に使い手を遣わしていたのだが、狂王が引き起こした戦乱により帝の片腕たる近衛将軍宮(しょうぐんのみや)にも力を貸すようになった。その流れで雷文公と竜武公にも大いに力を貸し、狂王に対して恨みを買うこととなった為に一族総出で扶桑より中原へと移住する事となった。

 移住後も各地にある扶桑人街の治安を守ることを務めとしており、ハヴァリア地方に元々住んでいた中原種の狼人達との交友や混血も進んでいる。

 雷文公とその父親により地位を高められた恩義から、東大公家への忠誠は扶桑人よりも厚く、その為にそれと知らない内に【義挙】の面々からオストシュタット扶桑人街の治安維持から密やかに外され、中央山脈を越えた先にある扶桑人街へと追いやられていた。

「そこら辺は上様も計算しておったのだろうが、今となると一部でも手元に残されておられたら話は別だったんじゃがなあ」

 珍しく兵四郎は愚痴った。

「おや、先生は上様のお考えに反対だったので?」

 意外そうな表情を浮かべ、慶一郎は尋ねた。

「もう少しやりようがあると云っておるだけじゃ。儂に相談あらば、もう少し危険な橋を渡らず様に済ませたわ」

 東大公家最良の戦略家と呼ばれる翁はそうぼやいた。

「でもそうしますと、上様の狙い通りに敵は動きませんでしたよね、不利な訳ですし」

 冷静に解析した状況を慶一郎は披露する。「何せ、東大公家のみに忠誠を誓っている壬生狼に、扶桑時代も含めて五指に含まれるという名将がいて、上様秘蔵の一番弟子がいる訳で。そんな状況で、誰が謀反を起こすんですか」

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