その弐
「そうか。お互い難儀だな」
憂鬱そうに仁兵衛は笑った。
「まあなあ。だが、俺の場合はそうなることぐらいは覚悟していた。それこそ、生まれが生まれだからな」
力強い意志を感じさせる目を向け、慶一郎は言ってのけた。
「東大公家が出来て以来の武門の名家、だったか?」
「大体そんなところだ。ま、正確に云うと、御先祖様が初代様の友だったってだけの話でな」
慶一郎は肩を竦める。「それも、まだ武幻斉様との修行の旅の途中で出会ったらしくてなあ。出会った時から馬が合い、正に莫逆の友と云うべき存在だったらしい。長じて雷文公が朝廷に出仕してからもその配下として八面六臂の大活躍で、本来ならば雷文公が扶桑を追われた時、共に国を出ようとしたらしいんだが、竜武公のことを重ね重ね頼むと云い含められたみたいでな、扶桑に残って常に先陣を切っていた。扶桑を離れる時も殿を務め、この地に渡ってきたのも最後の船だったそうだ」
「騎突星馳流の当主だったんだろう?」
「ああ。お陰で代々騎突星馳流を学ぶ羽目にあっているよ。俺は性に合っているから構わないんだがね」
にやりと笑い、慶一郎を見やる。「別に、親父さんを助けることに違和感を覚えている訳じゃないんだろう?」
「当然だ!」
語気荒く、仁兵衛は言下に断じた。
「そいつは重畳。そこからして悩んでいるんだったら処置無しって奴だ。だけど、相棒、お前さんはそうじゃない。だったら、今は悩まずにいる、それで折り合いは付くだろう?」
慶一郎はいとも簡単に言ってのけた。




