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御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
第三章 戦陣
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その弐拾

「だからこその【義挙】か。成程、理には適っている」

 つまらなそうに仁兵衛は溜息を付いた後、ふと友人の方を見る。「急に静かになったな、友よ」

「……いやな、【旗幟八流】の当主に匹敵する人間が少なくとも二人もいるのに、誰も云い出さないことに対して疑問を持ってな」

「何の話じゃ?」

 茶化すところ一つ無い真摯な口調に引かれたのか、兵四郎は水を向けた。

「【奥之院(おくのいん)】ですよ、先生。御存知ないので?」

 不思議そうな口調で慶一郎は聞き返した。

「実在するのか?」

 疑念を抱いた眼差しで、兵四郎は慶一郎を見据える。「【旗幟八流】の当主のみが入ることを許された特別なる場所。儂とて聞き及んだことはあるが、永らく宮城に勤めた時もその存在を確認出来なかったのじゃぞ? 良くある噂話に過ぎないのではないのか?」

「その裏付けの為にお二人に聞いたんですけどねえ」

 沙月に視線をやりながら、「沙月ちゃんは聞いていないのかい?」と、尋ねた。

「申し訳ありませんが、その種の話を受け継ぐ前に先代が亡くなっておりますので……」

 申し訳なさそうに沙月は答えた。

「そう云うからには、お主は知っておるのじゃな?」

 慶一郎の発言から確固たる自信を感じ取り、兵四郎は確認を取る。

「自分で見たもの以外、余り信じない方なんですがね。こいつは家の口伝なんで、在ること自体は信じていますよ。まあ、家の流派の次期当主は兄者なんで、俺は一切聞いちゃあいませんがねえ」

 最後の一言を苦笑混じりに慶一郎は口にした。

一色(いっしき)助三郎(すけさぶろう)義晴(よしはる)、か。あやつが居ったら、斯様なことにはならなかったモノを……!」

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