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御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
第三章 戦陣
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その壱拾四

「普通はそれで限界というモノを学んでいくものじゃしな。この嬢ちゃんは良い子過ぎてそこまでやらかしてはおらなさそうじゃしのお」

 くつくつと笑いながら、「あともう一押しというところかの」と、呟いた。

 外野の喧噪は他所に、反応はすれどちっとも起きる様子のない沙月を見続けていた光は、

「ん~、いつもだったらこれで起きているんだけどなあ?」

 と、困った顔付きで振り返った。

 一人会話に加わろうともせずに沙月を観察し続けていた仁兵衛は、光へと顔を向け、

「そうなのか?」

 と、尋ね返した。

「うん。沙月ちゃん、お仕事中によく居眠りしていたの、お別れする直前だったし」

 迷うことなく、光は直ぐさま答えを返す。

「そんなに頻繁(ひんぱん)に居眠りしていたのか、これだけの使い手が?」

 意外な情報を聞き、仁兵衛は首を傾げた。

「ん~、なんか、引き継ぎがどうのこうのとか父様が云っていたよ。寝させておいてあげなさいって」

 その時のことを思い出しながら、光は仁兵衛にそう告げる。

「五月雨流の先代が死んだのが唐突だったからのお。【旗幟八流】の当主は他の官職に就くことが禁じられておるワケじゃしなあ。あれだけの使い手の代わりになる女官など、そうそう簡単に見つからなかろうて」

 光の言葉を継ぎ、兵四郎は推察したことで補足する。「その上、本来の継承者もほぼ同時期に陣没しておるからのお。なんら助言も手助けも得られない五里霧中の中で、内親王たる姫様の護衛の引き継ぎと、五月雨流当主になる為の儀礼を同時にやっておったら、どう考えても時間がいくらあっても足りんでな」

「当然、東大公殿下もそれを理解しているが故に職務中の居眠りは大目に見た、ってことですか。ま、あの方は然ういう辺りは優しいと云うより、甘いですからねえ」

 したり顔で()もありなんと慶一郎は首を縦に振った。

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