表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
第三章 戦陣
29/185

その壱拾参

「まあのお。あれとは古い付き合いじゃったんじゃが、先の大戦おおいくさで討ち死にしては、な」

 兵四郎は静かに溜息を付く。「全く、この年寄りばかりが生き残っていくわ」

「正直、先生が戦場で死ぬ姿を想像すら出来ないんですがね」

「儂とて武人よ。いずれは戦場で不覚を取る日も来るだろうさ」

 慶一郎の軽口に重々しく厳かに答えた。

「そうなる前に、楽隠居している様に祈っていますよ」

 それまでの軽口とは打って変わり、慶一郎は真摯な態度で告げる。

「まあ、好き好んで戦場で屍を(さら)す気はないから安心せえ。ただ、武人として、畳の上で死ぬことに多少の違和感を感じるだけじゃからのお」

「それもどうかと思うんですけどねえ」

 あけすけに胸の内を明かされ、どう答えていいものか困り果て、思わず苦笑した。

「ふむ、又話が逸れておるな。姫様、この嬢ちゃんをいい加減目を覚まさせましょうぞ」

「うん、分かったー」

 光は沙月の耳元まで行き、「沙月ちゃん、父様に見つかる前に起きなきゃ駄目だよー、また怒られるよー」と、声を掛けた。

 途端、沙月はびくっと身体を痙攣させ、

「──ね、寝ていません……。起きて…いま……す」

 と、夢うつつな寝言を返してきた。

「おお、おお。これは凄いの。【気】の使いすぎで身体が()かんはずなのに、意識を取り戻せるとはのお」

 顎髭を(しご)きながら、くぐもった笑いを浮かべた。

「似た様な経験があるんですかねえ? 普通はこんだけ【気】を使ったら昏倒したまま起きられませんからなあ。【刃気一体】を覚えたての頃、はしゃいでよく失敗したもんですよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ