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御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
第三章 戦陣
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その壱拾弐

「光はこの方と知り合いなのか?」

 目の色を変えた二人を後目に、仁兵衛は妹に事情を尋ねた。

「そーだよ。沙月ちゃんはこないだまで、光と遊んでくれたんだよー。とっても良い人なんだよー」

 無邪気に沙月を誉める光に、

「そうか、それは良い人だな」

 と、笑みを浮かべた。

「うん!」

 光も又、満面の笑みで頷いた。

「それならば、何故、彼女は我らに敵対したのだろう?」

 妹の懐き方からして、本来ならば敵に回るとは思えない人物だと看破した仁兵衛は、不思議そうに首を傾げた。

「ああ、余りこっちに来てなかった相棒は知るはずもねえか。この嬢ちゃん、遠藤沙月は橘の一門でな、五月雨流弓術の使い手として結構名が知れているのさ」

「付け加えるならば、五月雨流の当代になる前は奥向きの女官をやっておっての。まあ、云ってしまえば、姫様付きの護衛よの」

 慶一郎の軽い説明をこれまた手短に兵四郎は補足した。

「成程。親父様が信を置いていたのか」

 沙月の立ち位置をなんとなく理解した仁兵衛は深々と頷く。「だとしたら、より一層謎が深まる訳だが……」

「云いたいことは分かるがの、本人望まずとも巻き込まれることもあるわな。特に、権門の末流ならば猶更、の」

 苦い表情を浮かべ、兵四郎は吐き捨てた。

「むしろ、先代の当主もうちらの陣営じゃありませんでしたか?」

 はたと思い当たったのか、慶一郎も逆に納得がいかない顔付きとなった。

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