その参
そこで、一線からは退いたが未だに戦い足りず燻っている年寄りと罪を犯したが殺すには惜しい罪人を集めることとした。斯くして、死んでも多少は惜しいが大勢には影響せず、精鋭の力を失わさずに新たなる精鋭を鍛え上げる刃を東大公家は手に入れた。皮肉なことに、戦場に出ることがない最強の精鋭を。
(親父から聞いた昔話が事実で、光が言っていたことに間違いがないのならば、この山に教導隊が密やかに駐屯していることとなる。そんな相手が分かりやすい符丁や隠れ場所にいるわけも無し、だったら向こうに見つけて貰って案内して貰うのが手っ取り早かろう。それに、俺達よりも教導隊の方が追っ手の対処になれていようさ)
(素直に案内して貰えましょうか?)
(光と慶一郎が上手い事してくれていると信じるしかないな、そこは)
明火の懸念に、仁兵衛は思わず何とも言い難い表情を浮かべた。
(……正直なところ、何もかも上手く行っているところは想像できませんわね)
明火は思わず嘆息した。
(ああ。最低限為しておいて欲しい事は何とかなっていれば良いんだがな……)
ふと、辺りを見渡し、馬を止める。(一の二の三の……凄いな。こちらが気が付くか気が付かないかの距離にこんなに兵を伏せるとは。これほどまでの手練は初めて見る)
(確かに今まで巡ってきた戦場とは一線を画するのは確かですわ。この太刀に宿ってから今日まで、これほど優れた兵を見るのは本当に久しぶりですこと)
馬から飛び降り、囲みがない方へ馬を引いて誘導されていく内に、仁兵衛は慶一郎からの符丁を二三見つけた。
それに導かれるかのように進んでいくと、周りを囲んでいる者たちが誘導したい方向と多少のずれが生じてきた。




