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御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
第六章 魔王
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その四拾弐

「相棒! 血路を開いてくれ。勝負を決める!」

 強い決意を込め、仁兵衛は叫んだ。

「分かった。先駆けは任せろ!」

 二つ返事で引き受けると、慶一郎は真っ正面から魔王に向けて斬り込んでいった。

 群がる眷属や何処からともなく現れる触手や骨の槍を叩き落とし、見る見る間に道を作り出す。

「流石は騎突星馳流。多対一に良く慣れている」

 右手に太刀を構えたまま、慶一郎が作り出した道を仁兵衛は頓駆ける。

「主様、逆風では……」

「多少賭けになるが、手はある。後は、俺次第だ」

 明火の懸念を仁兵衛はばっさりと切り捨てた。

「賭け、ですか?」

 胡乱な計画だとばかりに、明火は怪訝な口調で問い返す。

「まあ、小細工に近いが、足りない部分は慶一郎の機転に任せるさ」

 先行する慶一郎の大暴れを眺めながら、仁兵衛は淡々と呟く。

「ならば御随意に。私は私の務めを果たすだけですわ」

「頼りにしている」

 仁兵衛は屈託の無い笑顔を浮かべ、「我、父より与えられた仁の心を捨て、今一度悪しきを討つ刃とならん。綺堂刃兵衛、推して参るッ!!」と、一転気合声を上げて吶喊した。

 気配を察した慶一郎は魔王の間合い寸前で雷獣の脇を蹴り、一気に離脱する。

 突如狙っていた獲物が姿を消したことで、魔王は一瞬だけ虚を突かれる。

 その一瞬に、仁兵衛は全てを懸けた。

 素早く左足を大きく引いた右半身、下段に構えた刃を身体の後ろに隠し、間合いを詰める。

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