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御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
第六章 魔王
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その参拾七

「主様、仕掛けないので?」

 泰然を通り越し、悠長の域まで足を踏み入れている仁兵衛に明火は焦れたかの様に声を掛けた。

「流石に気の消耗が激しすぎる。【竜気】を補助に使えない以上、【刃気一体】を万全にして仕掛けたい。【奥之院】に居る所為か、将又(はたまた)六大魔王が場に顕現している所為か、辺りの気を身の内に収めることが何時もより不安定だ。慶一郎には悪いが、焦って勝機を逸することだけは避けたい」

 落ち着き払った態度を崩さず、仁兵衛は慎重に気を練り続ける。「それに、慶一郎がやると云ったからにはやってのけるさ。問題は、俺の太刀が六大魔王に届くか、だな」

「私の全てを懸けて、刃と為すのですもの。同じ失態は二度と犯しませんわ。ただ、主様が如何なる窮地に陥ろうとも、【竜気】による力添えは一切出来かねません。正しく、背水の陣、本当に宜しいのですね?」

 明火はくどいと分かっていても盟約を交わした主の身を心配せずにはいられなかった。

「あの程度を切り抜けられねば、俺もそこまでだ。その上、今日は慶一郎が居る。これで勝てねば、何のための兵法ぞ。付け加えるならば、父上と光、それに橘に連なる遠藤の姫君を後ろに置いている時点で元より背水の陣よ。高々自分の命がそれに加わっただけ、何ほどのものか」

 呵呵と笑い飛ばし、仁兵衛は太刀を右手で太刀を構える。「さて、行こうか」

 【刃気一体】に達した途端、仁兵衛は雷光石火の動きで魔王の本体に肉薄する。

 それを防がんと眷属や荒ぶる混沌が行く手を阻むも、それを物ともせず、あっと言う間に己の間合いに捉える。

──定命者が、余を侮るな

 それまで気配が漂うだけの存在だった魔王が、急速に肉体を作り上げていく。

 鋭い豪腕の一撃を仁兵衛は臆すること無く踏み込んで交わし、肉体を作り上げると同時に隠された魔王の核に狙いを付けると迷い無く太刀を振り下ろした。

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