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御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
第六章 魔王
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その壱拾参

(何か分かったのか?)

 仁兵衛にしては珍しく期待に溢れた意志を隠さずに明火に尋ねる。

(懐に隠し持っている何か、それが力の源のようだと云う事はえ視ましたけれど、それが何で、何を宿しているのかまでは)

 明火は幾分か申し訳なさそうに告げた。

(場所さえ分かれば良い……と云いたいところだが、懐、か。さて、どう攻めたものかな)

 さしもの仁兵衛でさえ、懐の内にあるものを壊せと言われ思考が止まる。

 お互いに平時を重んじる流派同士、防具は軽装と言えるものの、重要器官を守る部位はそれ相応のものを身に付けている。当然、心臓に近い胸部は明らかに業物と分かる一品を装備していた。

(右手を切り落とすなり、左手を切り落とすまでは出来るが、そこからの隙が実に判断が難しい。……まあ、遣り様はあるか)

 一つ呼吸を置いてから、仁兵衛はいきなり踏み込むといつも通りに左太刀右上段から相手の右手を打つ。

 何度も繰り返された為か、彦三郎はある程度の余裕を持ってそれを見切り、反撃に移ろうとした時、目の前に飛んできていた小太刀の存在に気が付いた。

 慌てて左手で小太刀を弾き返すが、その致命的な隙を突いて仁兵衛は返す刃で胴を薙ぎ払った。

 並の一撃ならば耐え切れただろうが、ここ一番とばかりに【竜気】を上乗せしたその一撃は紙を切り裂くが如くあっさりと胸当てを真っ二つにした。

(どうだ?)

 間合いを取り直してから、仁兵衛は明火に確認を取る。

(……捉えました)

 明火は今の一撃で見つけ出した魔王の核を仁兵衛に感覚を共有する事で誘導した。

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