その参
「ただでさえ、この世界を不安定にせんとする勢力が暗躍しているのに、それを無視してまで行う事ですか? なかなか笑わせてくれますね、連中は!」
静かに、静かに乾いた笑みを浮かべ、クラウスは、辺りを睥睨する。「あちらの肩を持つ者はいますか?」
誰もが黙ったままクラウスを見る。
「ならば、思い上がった愚者に鉄槌を下したい者は?」
その場にいる者全員が己の得物を手にして立ち上がる。
「いいでしょう。僕たちの進むべき道は決まりました。思い上がった阿呆どもに代価を支払っていただくと致しましょう」
全員が黙ったまま大きく足を踏み鳴らす。
丁度その時、
「上意である!」
と、声を荒げ、店内に入り込んできた者がいた。
一斉にその声の方に全ての視線が行く。
それに臆することなく、
「【冒険者互助組合】へ告ぐ。我ら東大公家は中原の今を憂い、武力介入を開始する事を決定した。以後、我らの指示があるまで軽挙妄動を慎むように」
と、朗々とした声で指示を出す。
「使者の方よ。一つ確認したいのですが、よろしいでしょうか?」
クラウスは努めて爽やかな笑顔を浮かべながら、使者へと一歩近づく。
「何だ」
「いえね、それは一体どなたの御諚かと思いましてね、今一度確認致したいのですよ」
「東大公家の御定めになった事である」
男は再び東大公家の名を出して上意書をかざす。