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御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
間章 冒険者
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その弐

 何故ならば、急進派は南大公家にそれとなく話すら通していないのだ。

 現在、中原が襤褸(らんる)のように乱れているのは最後の皇位継承者があまりにも莫迦な真似をして婚約者を怒らせ、反旗を(ひるがえ)された事が発端である。

 その際、東大公家は婚約者側に義があるとして皇家に弓を引き、南大公家は「(はなは)だ遺憾なり」と書面で通達し、一切の援助を断った。

 それでも皇家の方が圧倒的に優位だったのだが、件の婚約者が怖ろしく優秀であり過ぎた為、皇家本流は断絶し、中原は乱世となった。

 東大公家が陰に日向に援助したのが原因で乱世の幕開けになったというわけではない。それに、南大公家とて、表だっては援助しなかったにしろ、密やかに冒険者互助組合を通して助力していた。それでやっと何とか皇家と同じ舞台に立てるようになっただけであり、それを(もっ)て乱世の責任があるというのは酷というものであろう。

 むしろ問題であったのは、戦後、勝ち抜いた婚約者の本家本流たる西大公家が婚約者の皇位継承を認めなかったのと、本人が天下を()べる事に興味がなかっただけの話である。

 当然ながら、両大公家共に乱世の到来を望んでいたわけではなかった。しかし、結果的に乱世を導いた以上、東大公家と南大公家はその責を果たす義務があると認識していた。

 そこで東大公家と南大公家はこれ以上の混乱が中原に舞い込まないように協力する事を決めた。少なくとも、人ならざるモノが何らかの介入しないよう、【冒険者互助組合】を通じて積極的に動く事を互いに約束した。

 そのことを一般の冒険者達は知らない。

 だが、東大公家と南大公家に認められた者たちはそれを知っている。

 知っているが故に、この場にいる誰もが急進派に対して怒りを覚えていた。

 彼らが今の中原に愛想を尽かし、自らが乗り出したこと自体は問題ない。それは東大公家の中の問題であるし、それも又平和への近道かも知れない。

 ただし、自らが決めた責務を放棄してまで行う事ではない。行うにするにしろ、今まで協力してきた者たちに対して筋を通してから為すべきである。知らなかったではすまされない。すませてはならないのだ。

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