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御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
間章 陥陣営
127/185

その七

 それこそ、龍すら通り越して、竜に匹敵すると言っても過言では無い。

 【旗幟八流】の当主でもこれだけの気を練り上げ、放散させずに制御出来る者はそうはおるまい。

 迷い無く振り下ろされた鉞は、甲高い金属音と共に金剛の大門を大きく震わせ、気を視ているものの心眼を眩ます。最早反撃云々などと居ている余裕など無く、先程よりも怖ろしく大きな衝撃を床に伏せて何とか凌いだ。

 そして、門の裏で作業している者はもっと衝撃的な場面を見る事となる。

 大門を閉じるのに用いられている大の大人が十人掛かりで何とか持ち上げられる金剛製の閂が見る見る内に真ん中から(ひしゃ)げていった。

 誰しもが腰を抜かし、呆然としている間に、今度は金剛製の門も()し曲がり、内側に押され込んで来た。

 兵四郎が鉞を振りきり残心の姿勢を取ると同時に、閂が宙を舞った。

 衝撃に押し切られ、門がドンと内側に開く。

 愛馬の上で鬼気迫る眼差しを宮城の方に向け、そのまま静かに佇む。

 そして、守兵が無力化している隙に、教導隊全軍が西門前の堀端に集結していた。

 誰もが固唾を呑んで見守る中、静かに鉞を真上に上げ、

「全軍、度し難き阿呆共に身を以て教え込もうぞ! 我に、続けえええぇッ!!」

 と、真っ直ぐ宮城目掛けて兵四郎は鉞を振り下ろした。

 大地を揺るがす鯨波(げいは)が鳴り響き、駆け出した兵四郎に全軍追い(すが)るように進撃を開始した。

「邪魔じゃあああああ! そこを退けィ、ひよっこ共があああッ!!」

 一喝一閃、世界が凍り付く。

 鉞の柄で武装した大の男たちを軽々と放り投げ、沿道の商家の壁に扉に叩き付けた。

 誰も彼も本格的な治療を受けるまで再起不能になる様な怪我を負わせるが、一人たりとも死んではいない。

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