その四拾壱
又三郎も又、それを追う事無く、仕切り直さんが為に間を取る。
手に汗握る展開に、思わず帯刀は周りの事を忘れてその勝負を見る事に没頭していた。
それは、帯刀が東大公位について以来初めて見せた隙であった。
そして、その好機を見逃すほど、その男は甘くなかった。
「!?」
脇盾の隙間から右脇腹を刺され、帯刀は膝を屈した。
「漸く隙を見せたな、贋者が」
仇を見るような険しい表情で彦三郎は吐き捨てた。
「クッ、これは不覚を取ったか……」
彦三郎から瞬時に右脇腹を刺している小太刀を奪い取り、転がり込むように間合いを取る。「俺とした事が、飛んだ間抜けだ」
「父上ッ!」
仁兵衛は又三郎を打ち棄てて駆け寄ろうとするが、又三郎が計画を邪魔されぬ為、命懸けで足止めを決行した。
「退けェっ!」
それこそ力任せに太刀を叩き付け、受けに回った槍の柄を中半から真っ二つに斬り裂き、その勢いの儘、刃の中半で又三郎の兜の鉢を叩き割った。
衝撃で意識がふらついている又三郎を蹴倒し、仁兵衛は父親を救わんと真っ直ぐに突っ込む。
「素っ首、頂く」
嘲るように笑い、抜き手で動きが取れない帯刀の首を貫かんと構えを取った。
如何に【竜気】を使おうと仁兵衛の足では間に合いそうにもなく、最早仁兵衛に打てる手は無かった。
「父上ぇーーーーーーーーーーッ!!」




