表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
第五章 師弟
118/185

その参拾九

 然ういう意味では、慶一郎との勝負は例外中の例外であった。勝負度外視で遣りたいように技を交わした。逆を言えば、それしか仁兵衛の立ち回りを見ていない者がいたとしたら、まず何もかもを勘違いするだろう。

 その勘違いがこの膠着を招き、どちらも相手を推し量る事を失敗した。

 仁兵衛がこの膠着で先に動いた事は結果的には動かざるを得なかったからなのだが、この勝負に於いては、又三郎にとってはある意味で予想外、ある意味で想定通りの展開にやっとなったのである。

 従って、仁兵衛の手に対し、又三郎が取るのはただ一つ──

「降魔牙穿流奥義、水鏡みつかがみ

 取って置きの切り札を使う事だった。

「!?」

 【竜気】により飛躍的に身体能力が向上していた仁兵衛はそれを察知した瞬間、無理矢理大きく間を取った。踏み込んでいる最中に空中を蹴るかの如く動きを変えた為に勢い余って転がり込んだが、それが逆に命を助けた。

 如何なる手段かは知れないが、仁兵衛が踏み込んだ辺り一帯何かに薙ぎ払われた気の痕跡が残っていた。

 又三郎の槍の間合いでは無い上、槍の軌道は明らかに何も無いところを斬っていた。

(主様。水月意射、かと)

 明火は素早く相手の技をそう断じた。

(……水月、か。月は無心にして水に移り、水また無念にして月を写す。相手の心の動きを察知し先を取る技法が極まって、先を打ったという事実だけを現実のものにしたとでも云うのか? 玄妙を通り越して玄妖だな)

 思わず心中で苦笑しながら、素早く立ち上がった。

 相手を視て見ると又三郎の気がかなり減じていた。【刃気一体】のために蓄えられた気が見るも無惨な状態である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ