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御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
第五章 師弟
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その弐拾弐

(力を使いますか?)

(……まだ止めておこう。何が起こるか分からない。なるべく奥の手は隠しておきたい)

 明火の提案を暫し考えてから断り、仁兵衛は【刃気一体】を発動させる。(まずは小手調べといこうか)

 慶一郎との決勝を再現したかの様に、消耗を顧みず仁兵衛は一気呵成、目にも止まらぬ速さで斬撃と踏み込みを繰り返す。

 それを柄で受け、穂先で受け流し、最低限の動きで()なしながら、又三郎は帯刀と仁兵衛の間から上手い事、帯刀を己の右側に位置するように壁へと下がっていった。

(……親父様と俺の距離を離させようとしているのか? 一体何のために?)

 何となく相手の狙いを読んだものの、意図が見えてこず、仕方なく誘導されるが儘、又三郎を壁へと追い込む。(態々壁際を陣取ることに何の意味があるのだ? こちらより、あちらの方が動きが限定される気がするのだがな)

(相手は【旗幟八流】の当主なれば、何らかの奥の手があるのやも知れません。主様、用心なさいませ)

 明火は思考の袋小路に()まり込み、悩む仁兵衛に冷静に警告した。

(ああ、分かっている。どう考えても罠だからな。慎重にいくさ)

 見えてこない意図を最大限に警戒しながらも、仁兵衛は着実に相手の動きを封じていく。(自分が不利な場所に陣取って、この為体(ていたらく)だと? 益々以て狙いが読めんぞ)

 有利な状況に事が進んでいる仁兵衛の方が、先の見えない不安から焦りが生じ始めた。

 一方、又三郎は黙々と仁兵衛の攻撃を去なす事に集中し、状況を膠着させる。

(……泥仕合こそが相手の狙いでは? 事態が長引けば長引くほど、慶一郎の危険が増していきます)

(それなのか……。確かに、それが狙いと云うのならばすんなりと納得は出来るのだが……)

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