表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
御前試合騒動顛末  作者: 高橋太郎
間章 扶桑人
10/185

その八

「長命の人類種(ヒューマノイド)なら挑めそうだが、そんな物好きはおるまいな」

 楽しそうに笑い飛ばし、「私とて流石にやる気にはならないしな。例え、英雄を間近に見続けることが出来る環境だと分かっていてもな」と、肩を竦めた。

「文官なら兎も角、武官の方は扶桑人と中原人の体内の【気】の蓄えに雲泥の差がありますから、二代三代と扶桑人の血を混ぜていかないとどうにもならない事実がありますからねえ」

「扱いにもな。結局のところ、扶桑人が伝来の兵法を惜しげもなく伝えたところで、中原人が扶桑人ほど扱いきれなかったという事も扶桑人の存在価値を高めた訳だ。逆を云えば、初代と二代目の方針がなければ、彼らの危惧通り排斥され、滅ぼされていた可能性が高かろうな。律儀者で、自分たちの争いには介入せず、世界を守り抜くことしか興味を有さない自分たちの盾となってくれる信用出来る隣人を滅ぼす馬鹿は余程でもない限り(あらわ)れまい」

「千年近く経った今を見て見れば、実に達見だったことがよく分かりますね。本当に、僕は助かります」

「これからも斯くあって欲しいモノだが……さて、どうなるモノかな」

 真面目な顔で考え込むアルの洋杯に、親爺は黙って酒を注ぐ。

「僕はそれなりに肩入れする予定ですがね。小父さんはどうしますか?」

「私か? 私は、間近で英雄譚が見られればそれで良い。国家の行く末など興味はないよ。世界と人類種が滅びなければそれで良い」

 確固とした信念をその瞳に宿し、つまらなそうに嘯いた。

「ははあん。だからこそ、今、ここにいる訳ですか。成程、成程。納得いきましたよ」

 したり顔のクラウスを後目(しりめ)に、アルは洋杯を静かに()した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ