―黒い猫―
小説を連載するのは初めてで、どこかおかしかったり、誤字脱字もあると思いますが、どうか暖かい目で読んでくださると嬉しいです。
恋愛系に近づけたいとは思っていますが、基本は主人公の日常です。
普通から人生が一変した彼女のこれからを少しずつ書いていきたいと思います。
どうかよろしくお願いいたします。
昔、時計店をしていた祖父の店を改築して最近新たに‘other eye’(片方の目)として店を出した。
窓の外を見ると厚い雲に覆われて今にも雨が降りだしそうだった。
店の外に出してあるブラックボードを片付けようと外へ出ると私が飼っている黒猫が路地の前で座っている。
「ノアどうしたの?」
ノアの所までやって来ると路地の所に私と同じくらいの赤に近い髪色の若い男の子が座り込んでいた。一瞬どきっとしてノアを抱き上げ見なかったことにして店に帰ろうかと思ったけれど、私が来てもなにも反応しないからもしかしたら死んでるのかと思い声をかけた。
「……ちょっと…大丈夫?」
無反応の男の子。揺さぶってみたら男の子は気がついたようでぼんやりした顔でこっちを見た。
気がついたことに安堵し、あまり人とは関わりたくないから帰ろうとすると右手を捕まれた。
意識がはっきりしてきたのか私の格好をじろじろ見てくる。黒いロングツインテールにドレスのような黒のワンピース。そして右目には黒の布地の眼帯。私もこんな姿の人は珍しいとおもう。
「…ぁ…き、きみは?」
「……私はこの店の店長。救急車か警察呼びますか?」
「呼ばないでくれ!」
私は男の子を見つめる。男の子は私の手を強く握る。
「……とりあえず中に入りましょうか。」
男の子を立たせてあげるとそのまま引っ張っていき店の中に入った。
レジカウンターの上にノアを乗せてカウンターの後ろにある丸椅子をだしてきた。
それをレジ前に置き男の子をみると、物珍しそうに店内を見ていた。
店内の棚に飾られているアクセサリーや小物の雑貨。フリルの沢山ついたピンクや黒、カラフルなドレス、ワンピースや靴。
中央の天井にある小降りのシャンデリア。
私の店はいわゆるゴシックロリータの店。
「……ここに座ってて。」
男の子を椅子に座らせると私は店の外に傘立てを出し、ブラックボードを店の中になおした。とたんに雨が沢山降ってきた。そして再び男の子の前に立ち、質問した。
「……で。あなたは…?」
「俺は…。二葉。」
私の事をじっと見ながら彼は名乗った。
「…………」
「…………」
お互いになにも言わず沈黙が数分続いた。
「……それだけ?……なぜあそこに座ってたとかは…?」
半ばキレぎみで聞く。
「…俺は、金がなくて……。」
「……貴方、家出!?」
「ち、ちげ!」
「……今すぐ家に帰って仲直りしろ!!全く下らないっ!」
厄介なモノに巻き込まれたと青ざめた。とりあえず関わりたくないと腕をくみそっぽを向いた。するとガタガタと音がし、ちらりと見ると二葉は土下座をしていた。
「頼む!!ここで働かせてくれ!!」
「……やめて!ここで雇うなんて出来ないわ!」
「金が無くて行くところもないんだ!!」
頼む!!お願いだ!!と長い間すがり付かれ。結局私が根負けした。
ガタッとさっきまで二葉が座っていた丸椅子に座る。二葉は床に正座して座っている。
「……貴方。年齢は…?」
「あ、俺は今は16…。高校2年だ。」
「……誕生日は?」
「12月15日…。」
よし。とりあえずは年下だ。と安心した。
「あんたは?」
「……朝倉 玲佳。17歳。それとここの店長なんだから敬語。」
「え!17!?誕生日は?」
「……4月4日。」
「それって俺と同い年って事だよな!?」
「……8カ月11日年上よ。」
うっわと隣で騒ぐ二葉は敬語に直す気もないらしい。
私はカウンターの後ろに丸椅子を持っていく。
「あ、俺は何したらいいんだ?」
「……まず二葉は着替え。」
店内の服を何着か見繕い、二葉と服を店の試着室の中に突っ込む。うわわっと言っていた二葉も大人しくなり私は二葉の靴のセンチを見ると店内から箱を持ってカウンターの所にへいった。箱をカウンターの上に置き椅子に座る。
雨の音と、二葉が着替えているだろう音だけが響き、私は大人しく座っているノアを撫でる。
シャーっと試着室のカーテンが開かれアンサンブル風Tとサルエルどちらも黒で元々きていた白のプリントTシャツとかっこいいネックレスでよく着こなしていた。
「これで、いいのか?」
「……まぁ。いいんじゃなぁい?」
スッとカウンターの上にある箱を二葉の方に出す。二葉は私の顔を見る。どうしたらいいかわかならいらしい。
「……開けなさい。」
二葉は恐る恐る箱を受け取り蓋を開けた。中には白に黒の紐の厚底スニーカーが入っていた。
「……プレゼントよ。仕事着として使いなさい。」
二葉は早速靴を履き替えた。
「うぉっ!ピッタリだ。」
二葉はリアクションが少々大きいような気がするが気にせず、二葉を店の奥に案内しようとした時だった。ぐぅー音が鳴り、二葉の方を見るとお腹を押さえていた。どうやらお腹が空いているようだった。
「……お茶にしましょうか。」
そういってノアを抱っこし、レジカウンターの後ろにあるカーテンの中に入っていく。二葉も荷物をもってついてきた。カーテンの中には小さな玄関のようなホールがありそこからあまり高くない段差がある。私はノアをおろし靴を脱いであがる。
「ここがトイレね。」
あがって廊下の右側の扉を指差しながら言うと左側の扉が開いたままの部屋に入る。
「この階段は?」
「……貴方には関係ない所よ。」
二葉はあがって廊下の先にある階段の事を聞いてきたが私はそれを軽くあしらう。二葉は私のあとに続き部屋の中に入った。
中は畳でちょうど中央に丸い机がある。
真正面には窓があり部屋の左側は小さなキッチン。右側には押し入れがある。押し入れの前にはクッション入りのかごがあり、ノアはその中に入った。
机の近くの服と鞄を拾い上げると小さな棚の横に置きキッチンへ向かう。
「……とりあえず、座ってて。」
「…店は…?」
「……あぁ。いいの。お客はあんまり来ないから。」
「それじゃあ、もうからないんじゃ…?」
「……ほとんどはネット販売かな?それでだけもまぁまぁ稼げるよ。」
小さなポットにお湯を沸かし、カップを2つ用意する。小さな冷蔵庫の中からカップケーキを出しお皿の上に乗せる。
「……コーヒー?それとも紅茶?」
「コーヒーがいい。」
棚からインスタントコーヒーの瓶をとりカップの中に粉を入れお湯を注ぐ。カップケーキとコーヒーを机に置きどうぞとすすめる。二葉はいただきますと呟くとカップケーキを食べはじめた。
スティックシュガーの入った瓶を二葉の近くに置き、冷蔵庫の中から牛乳を取り出すとコーヒーの中に入れた。くるくるとスプーンで混ぜ、私は二葉の正面に座る。
スティックシュガーを一つとり、いれまたくるくると混ぜる。
「甘党なんだ?」
「……そうね。甘いのは好きよ。」
沈黙が気まずいのか二葉は私に話しかける。私はぬるくなったカフェオレを飲む。二葉はスティックシュガーを一つ入れ、コーヒー片手にカップケーキを食べている。
「……貴方、これからどうするの?」
「へ?」
「……住むところとか、生活とか……学校とか。」
そう、二葉は今お金がないし、たぶん住むところも無いんだろう。どうする気なんだろうと質問すると、二葉は真剣な顔をしている。
「学校は制服持ってきてたから大丈夫だけど、住むところがなぁ…。」
「……今までは…?」
「ネットカフェとか友達の家とか。」
「……友達に泊めてもらえば?」
「ダメなんだよ!家族の奴が探してて…見つかるとヤバイから。てか一回見つかりかけて…さ。」
なんだろうこと言い方。ただの喧嘩で家出してきたわけではないようだ。
なにしろ二葉は行くところもない、金もない、その上私の所で働くんだ。これ以上厄介な事を持ってきてほしくない。
「なぁ。あんたここで暮らしてんのか?」
「……いいや…?」
二葉の質問の意味がよくわからず、二葉を見ると何か企んでいるような顔をしていた。まずいと思い二葉よりも早く決断を下す。
「……駄目よ。」
「まだ何もいってないのに!?」
「……面倒事をこれ以上増やさないで。」
「ここに泊めてくれ!!」
「……嫌。」
案の定。二葉は変なことを企んでいた。泣きつく二葉。さっき見たいに根負けしないうちにカップをもってカウンターの所に逃げる。二葉は私を追って玄関のところに座っている。
「頼む!!この通り!!」
「……知らない人を泊めるなんて無理。」
「知らないってここで働くんだし!!」
「……私は貴方の二葉って名前しか知らないわよ。」
「年齢と誕生日も教えてた!」
あーいえば、こーいい。なかなか折れない。言うだけ無駄かもと思い、二葉を無視する。一人でやいやい言っていたのも無くなりちらりと見ると二葉はうつむいていた。
「俺……実を言うとアッチ系の家で友達ともあんまりつるめなくて、本当は俺!カタギになりたいんだ!!
頼む!!ちゃんと家賃とかも払うし!
いくところが無いんだ!!!」
……ヤバイ一番関わりたくない奴に関わってしまったと私は後悔をしていた。まさかアッチ系の奴だったとは思わなかった。確かに体格もいいし、髪色も派手だと思ったけど!! 私のところでかくまってるってばれたら殺れる!?私の脳内はもはやパニックだった。
「……ふ、ふざけるな!あんたなんかクビだ!!」
「え!!まってくれよ!!なんでもするから!!」
「……殺られる…。間違いなく殺られる!!」
「………わかった!もし、俺が見つかったとしても俺が責任とるから。家のやつらには君は関係ないって言うから。…だから頼むよ。」
「………。」
じろりと二葉の顔を見ると苦しそうな顔をしていて、ふっと誰かの顔がよぎった。
「……なんでもするのね?」
「おぅ!」
私はカウンターの下から紙を取り出すとボールペンで思い付いたことすべてを書いていった。そして二葉にそれを見せた。二葉はそれを読み上げていく。
「
朝倉玲佳の言うことはなんでも聞くこと。
朝倉玲佳が危ない目に合ったら身を呈して守ること。
この店の事は誰にも言わないこと。
契約を守るなら朝倉玲佳は二葉に部屋を一つ貸すことと雇うことを約束する。
契約追加有り。………」
「……それが守れるならその下のスペースにサインして。」
二葉は読み終えると私の方を向いた。私は二葉に向かってボールペンを差し出す。二葉はもう一度紙に視線を落とすと私からボールペンを受け取り名前を書いた。
私はそれを受け取った。
「……いい?契約を破ったらすぐにここを追い出すから。」
「サンキュウ!!玲佳!」
先ほどの悲しそうな顔はどこにいったのか二葉は元気よく私の名前をよぶ。そして私は二葉と店長と店員という関係になったのだった―。
と、とりあえずは謝罪を……。
短くまとめようと思っていたのですが、玲佳の動作、考えていることを書きたくて書いていたらだらだらと長くなってしまいました。そして玲佳の感情もまだまだ書けてないような気がします。
とりあえずは今までの日常に新たな出会い。といった感じで二葉を登場させましたが、まだ二人の核心は出ていません。
これから書いていくのでよろしくお願いいたします。