マリーゴールド
side 雪透
「大丈夫だよね?」
その信頼は、まるで呪いみたいだ。
俺だって、苦しいのに。
「うん。だから、僕より兄さんを優先して」
雪透は優しい子なのね、と言うお母さん。
俺は、その想いに応えなきゃいけない。
兄さんの、代わりに。
どこまで行っても、どんなに頑張っても。
俺は所詮、兄さんのスペアだ。
そんなスペアの僕が呼ばれた。
兄さんの、せいで。
「雪透」
「兄さん……」
前までは言えていたはずの言葉が、どうしても言えなくて。
「迷惑かけたな」
前までと何も変わらない兄さん。
どんどん、俺よりも前に進んでしまう。
「あ、そーだ。これやろうと思って探してたんだった」
そう言って、兄さんが差し出してきたのは、オレンジの塊。
それが花であることは、すぐにはわからなかった。
「マリーゴールド。これからも、頼むな」
その意味は、俺にはわからなかった。
でもそれが、兄さんらしいのかもしれない。
「それ一旦部屋に置いてこい。早くしろよ。父さんうるせえし、」
確かにそうだ。
けれど、兄さんの場合はそれだけではないこともわかっている。
「といいつつ、本当はあの……亜依さんって言うんだっけ?あの人に会いたいだけだろ」
亜依さん。
なんとなく、綺麗な人だと思った。
母様だって、普段からメイクをしたり、着飾っていたり。
母様のほうが綺麗でもおかしくはないはずだ。
それでも、亜依さんの方が綺麗に見えた。
顔とか見た目というよりも、心が綺麗なんだと思う。
あの兄さんが選んだ理由が、少しわかる気がした。
そんなことを思っているうちに、また兄さんのところへ戻ってきていた。
「やっと戻ってきたか。じゃあ、行くぞ。雪透」
「……うん!」
side 透亜
「どうだったの?」
「ちゃんと、渡せたよ。……意味を理解してるかは、わかんねぇけど」
そっか、とだけ言った彼女は、再び俺に質問を投げかける。
「弟くん、元気そうだったね」
俺にはいつも通りにしか見えなかった雪透は、彼女から見たら嬉しそうだったらしい。
彼女が、よく人を観察しているのがわかる。
「また、行ってあげてね。お兄ちゃん」
お兄ちゃんなんて、呼ばれたことがない。
そんな本音は飲み込んで、彼女に言った。
「たまになら……いいかもな」
2つ分の視点って難しい。
雪葉様リクエストありがとうございます!
次回もぜひお待ちしております!!




