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バンドマンになりたいコミュ障陰キャの転生先は、『バンド』の概念がない世界でした ~戦闘力0だけど、ギターで魔王に挑みます~  作者: 小雨☂


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第8話 孤高の剣士アリア

「あなたレベルを上げたいんでしょ? 手伝ってあげる。代わりに、強い武器を作ってほしいの。素材は私が魔物を倒して手に入れるから」


「えぇ……!?」


 師匠のおかげで、武器作りのスキルは中々に高い。

 願ってもない誘いだが、あまりにも話が上手くいきすぎていて、戸惑ってしまった。


 なんで、僕なんかに……?

 こんな高レベルなら引くて数多だろう。


「私、魔王を倒したいの」


「ま、魔王!?」


 この世界には魔王がいて、世界を侵略しようとしているのは知っている。

 ただ、戦闘力皆無の僕には遠い世界の話だと思っていた。


「ぼ、僕には、絶対無理だよ!? 支援魔法と言っても、味方のステータス数値を若干上げられるだけだし……役に立てるか……」


「別に、あなたに期待してないから。魔王は私一人で倒すからいいの」


「一人で!? さすがに魔王相手に一人は危ないんじゃ……」


「だから、一人で倒したいの!!」


 少女がぐいっと、前のめりになる。


「魔王を一人で倒せたら、誰もが私の強さを認めてくれるでしょ? だから戦うの」


 彼女の瞳が鋭くなった。


「さすがに強い武器は必要だから、あなたに声を掛けたのよ」


 そうか、彼女は()()()()の仲間が欲しかったのか。

 周りを見渡しても僕しかいなそうだし、それなら納得できるかも。


「それで、あなたはどうしてレベルを上げたいの? 武器職人にレベルは関係ないでしょ?」


「僕は……バンドを組みたいんだ」


「バンド? なにそれ?」


 僕は、自分が作ったエレキギターをじっと見つめた。


「なんて言ったらいいのか……この世界でいう『音楽隊』かな。僕の作った楽器で、一緒に演奏してくれる仲間が欲しいんだ」


「…………は?」


 少女の顔が歪んだ。


「多くの人が命を懸けて魔物と戦って、世界を救うために魔王を倒そうとしてるのよ? なのに音楽隊を作りたいって……ふざけてるの?」


 少女は呆れたような表情で、大きくため息を付いた。


「……ふざけてないよ、真剣だ」


 僕は拳をぎゅっと握りしめ、まっすぐ少女の目を見つめた。


「誰かを守るために命を懸けるのは、もちろん立派なことだと思うよ。

 でも、僕だって自分の夢に命を懸けてるんだ」


『人が命懸けてることに、文句言うわけないだろ』

 師匠が言ってくれた言葉が脳裏に浮かぶ。


 その言葉のおかげで、自分の夢に誇りを持っていいんだと思えた。


「自分が命を懸けたいって思えるほど、好きなことのために生きるのが許されないなんて……そんな世界間違ってるよ」


 僕の言葉に、少女は目を丸くすると、苦い表情を浮かべながら視線を落とした。


 僕らの間に気まずい沈黙が流れる。


「……魔王討伐、気をつけてね」


 僕はその場を離れようと、ギターを背負いなおした。


「待って……!」


 少女の声で、足が止まる。


「……あなたの、言う通りだわ」


少女は唇をぎゅっと噛み締めた。


「真剣に挑んでることに、失礼なこと言ってしまって……ごめんなさい」


 彼女は、礼儀正しく頭を下げた。


 僕はその姿に、目を丸くした。


 正直、第一印象で、絶対謝らないタイプだと思った。

 言い方はきついけど、根は真面目なのかな。

 ……なんか、誰かに似てる気がする。


 僕はふっと笑みを溢した。


「僕は、アルバート・コン・アニマ。名前聞いてもいいかな?」


「……私、は……アリア」


 さっきまでの威勢が嘘のように、彼女はしょんぼりとしていた。


「……僕で良かったら、一緒にパーティー組んでくれないかな」


 アリアが目を見開いた。


「……ひどいこと言ったのに、いいの?」


 僕はアリアに笑顔を向けながら、手を差し出した。


「あぁ! よろしくね、アリア」


「……よろしく! アルバート!」


 アリアが、ぎゅっと僕の手を握った。


 こうして、僕に初めての仲間ができた。

 本命のバンドメンバー探しまでは、まだまだ時間がかかりそうだけど、

 それでも、また一歩近づけたんじゃないかな。



 * * *



「え!? アリア王都に住んでるの!?」


 僕が目を見開くと、アリアは何てことないような顔で頷いた。


「なのに……宿屋に泊まるの?」


「いいでしょ! 別に!!」


 僕たちは、王都にある宿屋の前に来ていた。

「部屋は、隣同士しか空いてないんだ」と店主が言うと、アリアはちょっと嫌そうな顔をしていた。



「それじゃあ、明日は旅の準備をしてから出発ね」


「うん、よろしくね」


「寝坊しないでよね」とアリアは部屋へと入っていった。


 僕も部屋へと入ると、そのままボスンとベッドにダイブした。

 一日の疲れが一気に溢れ出てくる。


「仲間ができて良かったけど、ちょっと不安だな~……」


 悪い子じゃなさそうだけど、一人で魔王討伐はさすがに現実的じゃない。


「いやいや……アリアも真剣なんだ。僕にできることを頑張ろう」


 僕は気持ちを切り替えるため、部屋の窓を開けた。


 心地いい夜風が、ふわりと頬を撫でる。



 ――♪


「ん?」


 どこからか歌声が聞こえてくる。

 その声はとても美しく、それでいて芯の通った力強さが感じられる。


 歌声のする方を見ると、

 それは、隣のアリアの部屋から聞こえてきた。


 な、なんて、素晴らしい歌声なんだ!!


「アリア!」


 僕は思わず、窓を乗り越えた。




 あ、ここ三階だった。


「うわぁーー!!」


 僕は、かろうじて窓枠にしがみついた。


「アリアーー!!!!!」


 僕の声に驚いたアリアが、窓から顔を覗かせた。


「ちょ、何やってるのよ!?」


 落ちかけてる僕の姿に、アリアがぎょっとした表情を浮かべる。


「アリア!! 今の歌、君が歌ってたの!?」


「聞いてたの!? もう、だから隣は嫌だったのよ!」


 アリアは顔を赤くして、ぷんっとそっぽを向いた。


「君の歌、最高だよ!! お願いだ!!! 僕のバンドのボーカルになってよ!!」


「はぁ!? やる訳ないでしょ!」


 即答で断られてしまったが、絶対に諦めない。

 こんなにも、心が躍る歌声は初めてだった。

 絶対にボーカルになってほしい。あの歌声に合わせてギターを弾きたい……!


「やってくれないならこのまま飛び降りる!! 僕は本気だよ!」


「じゃあ飛び降りてなさいよ! 三階からなら死なないでしょ!」


「アリアぁぁー! お願いだよー!! 君しかいないんだぁ!」


 僕の叫び声で、次第に宿屋の前には人が集まってきた。


「なんだ、修羅場か?」


「ん? あの女の子は……?」


 下から見上げている通行人が、アリアの方に視線を向けた。


「ちょっと……! 私の名前叫ばないで!」


「アリアぁぁぁーー!! お願いだよーー!! 僕なんでもするから!!」


 半泣きの僕の声が響き渡ると、通行人たちが余計にざわつき始めた。


「わ、わかったから! ちょっと黙って!!」


 アリアは両手を前に突き出した。


「エア・リフト!」


「うわぁっ」


 アリアがそう唱えると、僕の体はふわりと浮き上がり、そのまま部屋へと投げ込まれた。


「痛たた……」


 床に転がっていると、バンっとドアが開いた。


「もう!! 変な噂立てられたらどうするのよ!」


 アリアの怒鳴り声が部屋に響く。


「アリア!! さっき『わかった』って言ってくれたよね!?」


「うるさい!! もう勝手にして!!」


 涙目になったアリアは、そのまま部屋を出て行ってしまった。


 なんかすごい怒ってたけど、希望はありそうだよね……?


「やったーー! 初めてのメンバー候補だ!!」


 まさか、レベル上げの仲間だけじゃなくて、バンドメンバーまで出来るなんて……!


「王都に来て良かった!」


 障害ばかりだった僕のバンド人生に、ようやく光が見えてきた。

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