表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バンドマンになりたいコミュ障陰キャの転生先は、『バンド』の概念がない世界でした ~戦闘力0だけど、ギターで魔王に挑みます~  作者: 小雨☂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/11

第11話 敗北

「この下が五階層ね」


 アリアと僕は、足早に下層へと繋がる階段を下りた。


 ピタッ――


「……!!!」


 五階層に足を一歩踏み入れた瞬間、僕の体は硬直した。


 空気が一気に変わった。

 息が苦しくなるほど、何かおぞましい気配を感じる。


 僕はゆっくりとアリアの方を向いた。


「ア……アリア……」


 アリアの顔は、少しだけこわばっていた。


「ようやく、張り合いが出てきそうじゃない……」


 アリアは無理やり口角を上げると、鞘を強く握り締めた。


「進みましょ……ボスがいるのかも」


 僕はごくりと息を呑み、震える手でぎゅっとカバンの紐を握り締めた。




「グォォォォーーー!!」


「きゃっ……!」


「アリア!!」


 五階層に入ってから、エンカウントする魔物のレベルが明らかに変わっていた。

 先ほどまでほとんど無傷だったアリアが、何度もダメージを受けている。


「このっ、ゲイルスラッシュ!」


 アリアの高速斬撃によって魔物は倒れた。


「はぁ……はぁ……」


 戦闘が終わってもアリアは肩で息をしており、消耗しているのは明らかだった。


「アリア、これ以上は危険だ! 戻ろう!」


「だめ……最深部まで、もう少しなのよ……」


 僕の話に聞く耳を持たず、アリアは前に進み続ける。


「無理して死んでしまったら、元も子もないじゃないか!」


 その言葉に、アリアの足がぴたりと止まる。


「無理してでも行かないと……間に合わないの……!」


 絞り出すような声で、アリアがつぶやいた。


「お願い、アルバート。もう少しだけ、付き合って……!」


 アリアの肩は震えていた。

 向けられた悲痛な眼差しに、心が揺れてしまう。


 僕は拳をぎゅっと握りしめた。


「……わかった。行こう」


 僕が頷くと、アリアは弱々しく微笑んだ。




 先へ進むたび、おぞましい気配に近付いているのを肌で感じていた。


 そして、ついに()()は目の前に現れた。


「ひっ……!」


 全身黒ずくめの甲冑に身を包んだ騎士が、部屋の中央に静かに佇んでいる。


「あれが……デスナイト」


 アリアはゆっくりと息を吸い込むと、剣を構えた。


 デスナイトもまた、ゆっくりと大剣を構えた。


「はぁぁぁ!!」


 アリアは一気に間合いを詰めて、剣を振り下ろした。


 キーーーンッ――


 刃がぶつかり合う音が鳴り響く。


 目の前の激しい戦いに、僕はただ、体を震わせていた。


「ぼ、僕も演奏しないと……!」


 慌ててギターを構えて、曲を弾き始めた。


【防御力+1】


 指が震えて、上手く演奏ができない……


 必死に戦うアリアの姿に目を向け、僕は唇を強く噛み締めた。


 これしかできないんだから、しっかりしろ!

 演奏に魂を込めろ! 僕が命を懸ける音楽に……!!


【スキル魔法発動:ライヴ】


 僕の足元に魔法陣が現れ、ギターが光り出した。


【攻撃力+3 防御力+4 速さ+2】


 アリアのステータスにバフがかかり始めた。


「アルバート、いい感じだわ!」


 アリアはにこりと微笑むと、剣を強く握りなおした。


「がんばれ!! アリア!!」


 震えながらも、僕は全力で演奏を続けた。


 すると突然、デスナイトの動きがぴたりと止まった。

 そして、その場でゆっくりと大剣を構え出した。


 大剣に黒い闇が纏い始める。


「何か来る……」


 アリアが咄嗟に防御の構えを取った。


 デスナイトの大剣に、禍々しい大きな闇の塊が纏った。

 そして、地面を力強く蹴り飛ばすと、アリアに向けて一気に突進した。


【デス・ブレイド】


 黒い津波のような斬撃とともに、大剣がアリアに振り下ろされた。


 ガキーーーンッ――


 受け止めたアリアの剣は、真っ二つに折れてしまった。


「がはっ!」


 アリアは斬撃波ごと、そのまま壁に叩きつけられた。


「アリア!!!」


 僕はアリアに駆け寄った。

 デスナイトが大剣を再び構え始める。


「ゔぅっ……」


 アリアのHPは、1/3に減っていた。


 まずい、武器もないし、もう無理だ!

 逃げないと……!!


 僕はアリアに肩を貸し、足を踏み出そうとした。


「アルバート……逃げてっ!」


【デッド・オーラ】


 気がつくと、目の前にはデスナイトの大剣が振り下ろされていた。


「うわあああ!!」


 僕らは、黒い衝撃波にまとめて吹き飛ばされた。


【アイテム発動:食いしばり】


 今のダメージで、僕のHPは1になった。

 アリアのHPも1/10ほどになっていた。


 デスナイトが手をかざすと、地面からは古びた剣と盾を持ったアンデットたちが湧き出てきた。


 まずい、まずい、まずい、まずい!!


 すると、僕の下に魔法陣が現れた。


【アイテム発動:帰還】


「……そっか! ブレスレット!!」


『HPが1/10になりましたら、強制的に帰還魔法が作動します』


 受付のお姉さんが、そう言っていた。

 良かった、これで逃げられる!



 でも……これって、一人分しかないんじゃ――


「…………」


 僕は咄嗟にブレスレットを外し、アリアに付けた。


「アルバート!? 何して……っ」


 アリアが顔を歪ませ、僕に手を伸ばした。


「だめ!! アルバートーー!!!」


 魔法陣とともに、アリアは光に包まれて姿を消した。


 僕は、ふぅっと息を大きく吐いた。


「良かった……これでアリアは大丈夫」


 そして僕は、ゆっくりと辺りを見渡した。


「さて……」


 目の前にはデスナイト。

 その周りには、アンデッドが僕を取り囲んでいる。


「……ど、どうしようかなぁ~……これ……」


 僕は全身を震わせ、半泣きになりながら、目の前に静かに佇むデスナイトをゆっくりと見上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ