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それはまるで『よだかの星』のような

作者: つな
掲載日:2025/12/11

物語をきかせてあげよう。

これはとある男の子の物語。


どこにも居場所がなくて、

だれからも受け入れられなくて、

ずっとひとりで生きてきた。


でも、"たからもの"を手に入れて、

幸せになった。


そして、そのいのちは今も

"あの人"の心の中、

きらきらと輝きつづけているんだ。


***


敬愛する宮沢賢治先生の童話

『よだかの星』のオマージュ作品です。

(青空文庫さまにて数分で読める短編ですので、

よければぜひ併せてお楽しみください。)



【冬童話2026『きらきら』参加作品】





――それはまるで『よだかの星』のような――



 たくさんの仲間が暮らす森で、

 生まれたのは、"とくべつ"な男の子だった。


 みどりと青に、きらきら輝くひとみ。

 その美しさをだれもが羨んだ。


 その心はまるでガラス細工のように繊細で、

 光を虹色に屈折させる、不思議なプリズムのよう。


 刺激を受け止めるのでいっぱいで、

 反応を返せない男の子に人々は眉をひそめた。


 世界はさわがしくて、まぶしくて、せわしなくて、

 男の子が1を考えるあいだに、10進む。

 ことばを覚えて使うのは、むずかしかった。


 だれかが言う。この子は"ふつう"じゃない。

 だれかが言う。この子は"まとも"じゃない。


 ---


 やがて、男の子はひっそりと旅に出た。


 出逢う人はみな、男の子を捕まえようとした。

 わけもわからず逃げて、うす暗い場所に隠れた。


 いつものどが渇いて、おなかが空いていた。


 まるで"よだか"のように、

 どこにも落ち着ける居場所はなくて、

 男の子はたぶん、愛をさがしていた。


 けれど愛をさがすのは大変だった。

 正しくことばを使わないと、

 心を伝えることができなかった。


 それなのに、男の子は

 まず、自分の心を知らなかった。


 いつもあたまの中はチカチカ、ピカピカ

 なにか考えようとすると、疲れてしまう。

 だからとてもむずかしかった。

 正しいことばを見つけて口にするなんて。


---


 だれかが、男の子をひっぱった。

 ――ここにいちゃいけない。

 その声はきびしかったけど、あたたかかった。


 ずっと、はげしい流れの川の中で

 溺れていたような気持ちだった。

 ようやく水面にかおを出して、

 大きく息をすいこめたような気がした。


 明るい場所にたどり着いた。

 男の子ははじめて、あたまの中が静かになった。


 きみが、すき。


 そんなようなことを考えた。

 それを表すことばを知らなかった。

 ことばが無くても、ふたりは親友だった。


---


 でも穏やかな日々はつづかなかった。


 何かおそろしいことが起きて、

 気がつけば、男の子はひとりになっていた。

 手を引いてくれた人は、いなくなった。


 気がつけば辺りは壊れた街だった。

 ああ、ここで、いのちが終わるんだと思った。

 もう疲れた。もうたくさんだ。


 その時、まただれかが現れた。

 ――ここにいさせてくれ。

 その声はぶっきらぼうで、あたたかかった。


 男の子はあたたかさにホッとして、

 心をことばにしてみようと思った。


 嬉しいこと、悲しかったこと、

 その人は、ただ黙って聞いてくれた。


 男の子が泣くと、抱きしめてくれた。

 優しい声で、もう大丈夫と言った。


 だから男の子は大丈夫になった。

 悲しいことは起きなくなって、

 まるで夢のような日々が過ぎた。


 あなたを、あいしてる。


 そう伝えると、愛してると返ってきた。


---


 秋になった。

 本当に幸せな毎日だった。


 生まれてきたこと、

 苦しみの中で生きたこと、

 居場所を探しつづけたこと、

 親友に出会えたこと、

 あの人に出会えたこと。


 ――ありがとう。


 さいごまで、幸せだった。

 ふたり、手をつないでいた。


 男の子は柔らかくてあたたかい光を放つ

 オレンジ色の美しい星になった。


 今でも夜空を見上げれば、

 きらきら、淡く輝いている。



 【おわり】


▼著者の作曲したイメージソングがあります。

(画面下部のリンクより飛んでいただけます。)



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敬愛する宮沢賢治先生の童話
よだかの星 』をオマージュしています。

▼よければ合わせてお聴きください。
オリジナル曲『よだかの星』(Spotify)▶︎ピアノソロ
イメージソング『よだかの君よ』(Youtube)▶︎歌モノ


▼この作品は著者つなの『BOX』という物語の要約ver.です。もし『BOX』にご興味をお持ちいただけましたら、ぜひこちらからチェックしてみてください。


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