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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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94/210

65年目-2 束の間の平和へ

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


フローラ・ヴィルタネン(24)

エリス・モリガナ(60)

マルティナ・アーデルハイド(40)

神谷美穂(35)

ヴァール(???)

アラン・エルミード(26)

エミリア・ハーケン(18)

 ダンジョン聖教およびWSOvs委員会、モンスターの様相を呈した第六次モンスターハザードも、いざ対策に本腰を入れればものの数ヶ月で形勢を逆転させるに至っていた。


 というのも、まずそもそもからして今回の事件は7年前起きた、第五次モンスターハザードに比べても圧倒的に規模が小さかったというのがある。

 世界規模での戦いを切り抜けてきたこの時代の探査者達は、当然ながら全体的な平均レベルが跳ね上がっており、しかも犯罪組織やスタンピードへの警戒心も保ったままだったのだ。

 

 こんな状態で半端なテロを仕掛けたとてうまくいくはずもない。加えて言えば、主導組織も実のところ委員会を追い出された者達でしかなかった、というのも大きいだろう。

 私怨からダンジョン聖教に攻撃を仕掛けていただけ、という極めて個人的なものだったことから、規模としては局所的テロリズムの範疇を出なかったのだ。

 

 一時はフィンランドのダンジョン聖教聖地モリガニアにまで踏み込まれかけたモンスターハザードも、戦力が整えばあっという間に仕切り直しからの逆転劇を見せる。

 ソフィア、フローラ、マルティナ、神谷、アラン、エミリアの六人が世界各地のスタンピードを収めつつ委員会の残党を追う旅路。さらにはそこに初代聖女たるエリスが加わり、もはや完全に終盤を迎えていたのであった。

 

 

 

 敵組織──実際のところは組織から追い出された残党連中による寄り集まりにすぎなかったが──の、首魁を倒して捕縛したヴァールやフローラ達、第六次モンスターハザード解決チームの面々。

 途中に別行動していた初代聖女エリスをも仲間に加えての進撃は留まるところを知らず、スイスを起点にルーマニア、トルコ、エジプト、インド、中国、アメリカ、カナダを経由して最終決戦の地、デンマーク自治領はグリーンランドにまで至り彼らを追い詰めていた。

 

 WSOの能力者犯罪捜査官チームやダンジョン聖教騎士団の面々が首謀者達を拘束し、連れていく様を眺めながらフローラは、ホッと息をついて微笑んだ。

 最後の戦いだけはあり、壮絶な量のモンスターを相手取っての死闘の直後であった……グリーンランドの一部地域は連中の手によりモンスターの巣窟となっていたのである。

 

「終わりましたね……はあ、ふう。まさか人生で2回もこんな、わけの分からない騒動に対処するだなんて思ってもいませんでした。そもそも私が聖女ってところからしてアレなんですけど」

「おつかれーヴィルタネンくん。まあこんなもんだよ人生ってさ、割と予期せぬ事態に繰り返し襲われたりするものなんだってエリスさん思うんだよねー」

 

 吐息を漏らす彼女の肩を叩いてねぎらうのは初代聖女エリス・モリガナ。

 第五次モンスターハザードの頃に知り合い、また今回の事件では途中から合流して共闘した大先輩である。


 陽気で軽妙な言動、そしてあのソフィアやヴァールとも気のおけない友情で結ばれているらしい不老存在。

 その実力もまた類稀であり、はっきり言えば今回参戦した探査者の中でも際立って強力な存在だったと言えよう。

 そんな彼女も腕を天に掲げて背伸びをし、身体をほぐしながらもおどけて笑った。

 

「ハッハッハー、にしても寒いよねここ。早いとこ引き上げようじゃないかみんな。はあ、こういうところにいると日本の温泉街なんかが恋しくなるねえ」

「日本の……温泉、ですか? 行ったことないんですけど、そんなに良いんです?」

「そりゃもう、人生観変わるねアレは。体の芯から温まるってのはああいうのを言うんだって、初めて味わった時には感動したもの」

 

 グリーンランドの気温は基本的に低い。今も氷点下など余裕で下回っている外気の中、彼女達は戦後の余韻に浸っている最中だ。

 探査者として、非能力者の何倍もの身体機能を持っているからこそそこまで影響を受けてはいないが、それでも寒いものは寒く……エリスがそうしたことから過去、訪れた日本での体験を語ればフローラは憧憬の眼差しで彼女を見るのだった。

 

「温泉かあ……良いこと思いつきましたよ美穂! モンスターハザードもこれにて解決したんですから、このまま日本のどこか温泉宿で打ち上げといきましょう!」

「何をまたいきなり、と言いたいですが今回は……さすがに各国を渡り歩いていささか堪えましたね。私も、正直母国の地を踏みたいと思っていました」

「温泉って聞いたことありますよ私も! 師匠と一緒に裸の付き合いとかしちゃうんですか!? 行きましょう行きましょう師匠、ぜひにぜひに!」

 

 そんな話を横で聞いていた先代聖女マルティナ・アーデルハイドもまた、乗り気の様子で相棒たる神谷美穂に提案する。

 普段ならば何を馬鹿なと一蹴する彼女だが、今回の件でいくつもの国や地域を渡り歩いたことから軽いホームシックというべきか、日本を恋しく思い始めていたようで珍しく賛同の意を示す。

 

 そこにアランの弟子にして彼に猛アタックを仕掛けるエミリアまで乗かかれば、もうそれだけでパーティの大半が日本ツアーに前向きな方針に傾くこととなる。

 これに残る二人、アランとヴァールもそれぞれ反応した。

 

「すまんがワタシは一足先にWSO本部へ戻る。業務が立て込んでいるのでな……とはいえ羽休めにはちょうど良いだろう、今回の戦いの疲れをゆっくり癒やしてきてくれ」

「温泉かあ、別に興味はないんだけど……クリストフも日本を目指しているみたいだしね。タイミングによっては現地で再会できるかもだ」

 

 モンスターハザードが終わったとはいえ、元からして業務量の膨大なWSO統括理事であるヴァールは即座に直帰することを選択。なんならこの場でパーティを離脱し一人、スイスへと向けて帰還するつもりですらいる。

 一方アランはアランで温泉よりも尊敬する親友、サウダーデ・風間ことクリストフ・カザマ・シルヴァが日本を目指しての武者修行の旅行中というのを念頭に入れていた。

 いずれにせよヴァール以外、全員乗り気のようである。

 

 結果として後日、ヴァールを除いたパーティメンバーは揃って日本の山形県の温泉宿にて湯治を行うこととなり。

 その中でアランとエミリアが晴れて交際をスタートさせ、ダンジョン聖教の女性陣達から祝福されるのであるが……それはまた、別の話である。


 ともあれ第六次モンスターハザードは、このようにして終結を迎えたのだった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


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― 新着の感想 ―
[一言] >アランとエミリアが晴れて交際をスタート 温泉でナニがあったんですかねぇ
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