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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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64年目-4 聖女号令

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


フローラ・ヴィルタネン(23)

マルティナ・アーデルハイド(39)

神谷美穂(34)

 大ダンジョン時代到来から63年もの月日が流れた──

 世界はすっかりとダンジョンとモンスター、探査者を中心に動く社会へと変貌していたが、この頃またしても不穏な事態が起きようとしていた。

 第五次から7年ほどしてから、またしてもスタンピードが頻発し始めていたのだ。第六次モンスターハザードの予兆である。

 

 とはいえ、過去幾度となく起きてきたこうした事件と今回のスタンピードとは決定的に異なる部分が一つあった。

 第六次特有の傾向……この時期のスタンピードはほとんど、とある組織の拠点をターゲットに差し向けられていたのだ。

 

 ダンジョン聖教。

 世界に一つきりの称号《聖女》を持つ者を象徴的存在として掲げる、大ダンジョン時代屈指の世界宗教組織。

 その各国各地域に点在する支部であったり教会、聖堂が集中してスタンピードに見舞われていたのだった。

 

 当然WSOのソフィア・チェーホワはすぐさま捜査を開始。事件の早期解決に向けて迅速な対応を始める。しかしそれ以上の速度、勢い……そして決意でもって事態に立ち向かった者達がいた。

 言わずもがな、当事者たるダンジョン聖教である。


 専属クラン、ダンジョン騎士団を擁する四代目聖女フローラ・ヴィルタネンが先頭に立ち、四度目にもなる委員会の策謀に真っ向から立ち向かったのだ。

 後の世にて、第六次モンスターハザードという呼称とは別に"聖女大乱"と呼ぶ者もいる騒動の始まりであった。

 

 

 

 四代目聖女フローラ・ヴィルタネンが聖女となって数年が経った頃、とある犯罪組織の情報がダンジョン聖教にもたらされた。

 発信源は先代聖女マルティナ・アーデルハイドとその友にしてフローラの師、ダンジョン聖教司祭神谷美穂。今や世界を巡って各地域の悪人を成敗して回る"ビショップ・アンド・プリースト"と呼ばれる探査者コンビである。

 

「いやーやたらめったらスタンピードが起きてるなーって思ったらまさかの委員会ですよ! 何度叩きのめされれば気が済むんでしょうねあいつら、あはははははは!!」

「しかも今度の標的は我々ダンジョン聖教ときました。これはもう、売られた喧嘩ということで言い値で買って熨斗つけて叩きのめして差し上げるのが道理というものでしょう……聖女様、どうかご決断をっ!! 我らが神、我らが聖女に仇なす者に死をっ!!」

「あわわわ……せ、先生落ち着いてくださいぃ……」

 

 フィンランドはダンジョン聖教聖地モリガニア、大聖堂内聖女室。

 報告がてらやって来ては片や面白がって笑い、片や顔を真っ赤にして激怒するそれぞれ目上の女性達に向け、フローラはとりあえず促すよう慌てふためきながらも取りなした。


 彼女もこの頃23歳。

 幼気な顔立ちもいくらか大人びており、すでに聖女として何年か経験を積んでいることもありそれなりに頼もしい姿を見せるようにもなっていたのだが……

 それでも怒髪天を衝く勢いの神谷にはとてもでないが真っ向から立ち向かえず、生来の気弱さが表面に出て半泣きになりながらもとにかく落ち着かせるべく健気な振る舞いを見せていた。

 見かねたマルティナが、笑いながらも相棒を宥める。

 

「はいはい落ち着きましょうね美穂ー。あなたの悪いところですよ、キレると視野狭窄になるのは」

「誰がっ!! ……いえ、そうですね失礼しました。ふうーっ……聖女様。まずはあなたのご采配をば」

「は、はい。あ、ありがとうございます……」

 

 激怒した神谷を諌めるなど、それこそ歴代聖女にしか務まる業ではない。

 いずれは自分もこうなれると良いなとマルティナを尊敬の視線で見つつ、けれどフローラの優秀な頭脳はすでに今般の頻発するスタンピードについて思索を巡らせていた。

 

 実のところフローラのほうでもすでに調査は行っていたのだ。それもWSO統括理事ソフィア・チェーホワと緊密な打ち合わせをしつつの、共同捜査の形で。

 そこからスタンピードがダンジョン聖教を狙ってのもの、バックにいるのが委員会であることも粗方突き止めていたのだが……まさかちょうど同じタイミングでこの二人が真実に辿り着いていたとは思っていなかった。

 

 ある意味手間が省けたと、フローラは落ち着きを取り戻して冷静に語った。

 

「すでにダンジョン聖教騎士団もWSOの能力者犯罪捜査官も動員して事態は動いています。このタイミングでお二人が帰還してくれたのは幸いというほかありません」

「なんと……さすがです聖女様。逸りに任せて失礼しました」

「すっかり騎士団も動かせてるんですね、よしよし良いですよフローラ! あの若作りや化物と組んでるのは気に入りませんが、そうも言ってられませんもんね!!」

「あ、あはは……」

 

 相変わらずソフィア、ヴァールを嫌うマルティナには苦笑いを浮かべるに留め、フローラはそこで真剣な表情へと切り替えた。

 釣られてマルティナ、神谷も居住まいを正す。これよりは四代目聖女からの直々の達しが出るのだ、ふざけてもいられない。

 

「アーデルハイド司教、ならびに神谷司祭。四代目聖女フローラ・ヴィルタネンが名の下に命じます」

「はい!」

「なんなりと」

「……ダンジョン騎士団を率い、WSOと共同で各地のスタンピードを阻止しなさい。そしてその裏に潜む委員会を表舞台に引きずり出し、我らが敵として公の場で討つのです! これは勅命──聖女号令です!!」

 

 聖女が、その身に宿す称号と権威権力のすべてをもって発する通称"聖女号令"。

 滅多なことでは発令しないそれを、フローラは躊躇なしに発した。そこから彼女の本気を感じ取り、マルティナも神谷も強くうなずき応える。

 

「かしこまりました! 我らが神敵、必ずや撃滅いたします!!」

「ダンジョン聖教に仇なす者に天誅を。聖勅、果たすことを誓います」

「よろしく頼みます、二人とも。私もチェーホワ統括理事とともに、入れるタイミングで前線へ向かいますので」

 

 それぞれがそれぞれの決意でもって意思を示す。

 ここに、第六次モンスターハザード解決に向けてダンジョン聖教が動き始めた。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 70歳を過ぎて、すっかり穏やかになった神谷も出てくる「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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― 新着の感想 ―
[一言] 聖女大乱て、聖女が乱を起こしたような感じね…… ちなみに、《聖女》は世界に一人だけど、《勇者》は複数いるんでしたっけ
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