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大ダンジョン時代ヒストリア  作者: てんたくろー


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64年目-3 アランの弟子

本エピソードの主要な登場人物

()内は年齢


アラン・エルミード(25)

エミリア・ハーケン(17)

 サウダーデの武者修行の途中、母国フランスへと帰還したアラン・エルミードはそこで彼とは別れ、故郷で探査者活動を続けることとした。

 友の予定ではこの後、故郷ポルトガルを経由して海路でベトナムへ向かい、そこから中国を経由して韓国へ向かい、そこから日本へと向かうというのだ。


 しかもそれぞれの国や地域でダンジョン探査を行いながらの旅路となるため、普通に考えても年単位の道程になる。フランスがホームであるアランとしては、さすがにそこまでは同行できなかったのだ。

 無論サウダーデもそのつもりだったため、アランの故郷を訪れて後、しばらく滞在してから一人でポルトガルへと向かっていった。

 

 さて、そのような経緯で日常生活に戻ってきたアランであるがこの頃、一人の弟子を取るようになっていた。

 それも弟子とは名ばかりの実質的な通い妻、おしかけ妻だ……元々彼の大ファンだったのが、スキルに覚醒したこととたまたまフランス生まれでアランの住む町の近くで育ったことから、想いが爆裂した形になる。

 

 やがては彼の妻にまでなるその弟子の名はエミリア・ハーケン。後のエミリア・エルミード。

 現代においては夫婦揃って探査者として大きな実績を残し、偉大な女性探査者として名を馳せる女傑であった。

 

 

 

「師匠、師匠! 朝ですよ、あなたのエミリアがやってきました!!」

「お、おはよう……エミリア。今日も元気そうで何より」

「はい! 朝から師匠の御尊顔を拝見できて幸福幸せ胸いっぱいです!」

 

 朝8時の訪問。ハイテンションで喜びを全身いっぱいに表現する少女、エミリアに寝起きのアランは寝ぼけ眼ながらも苦笑いをこぼした。

 この娘を弟子にとって以来、家の目覚ましはすっかりその役割を果たさなくなっている。朝10時に鳴り響くようにセッティングしていたのだ、そんなものが役に立つはずもないのだ。

 

 ──武者修行の旅を続けるサウダーデを見送り、自身は故郷に戻ったアラン・エルミード。

 しばらくはまた平穏な日々が続くかと思いつつ師匠のユリアン相手に世間話をしていた矢先、この少女が表れて開口一番弟子入りを志願してきた。


 

『第五次モンスターハザードの時、あなたに救われました! そんな私が探査者になれたのも何かの縁、ぜひとも師匠になってください!!』

 

 

 と、全探組の談話室で大声で叫ばれ、周囲の探査者達から指笛を吹かれたりしてからかわれたのも記憶に新しい話だ。

 どうも10年前のモンスターハザードの折、まだ幼いエミリアを助けたらしいのだがあまり記憶にない。当時はひたすら目についたモンスターを倒し続ける"カウンターハザード"だったのもあるし、そもそも引退を余儀なくされた師匠の仇討ちのつもりでしかなかったのだ。

 助けた実感などあるわけもない。

 

 こういうところでクリストフに大差をつけて負けてるんだよなあ……と、探査者として人間としての器で誇らしい敗北感を抱きながらもひとまずアランは少女を弟子にすることとした。

 彼ももう25歳にして探査者歴10年。弟子を取り後進を育成するのも悪くはないと、それこそ33歳の頃に自身を育ててくれた師匠ユリアンからアドバイスされたからだ。

 

 

『人に教わり、人を教えて。そこで初めて分かり身につくこともあるわよ、アランくん。あなたもサウダーデさんに負けじと成長していきたいなら、ものは試し……って言ったらなんだけど、なんでもやってみるものよ! ファーイト!』

 

 

 と、激励までされては断れない。ユリアンとエミリア、そして周囲の探査者達の後押しを受けてアランはであればと、生まれて初めて人の師匠になったのである。

 それによる変化は、如実に現れた。

 

「師匠、朝ご飯作っちゃいますね! いつものハムエッグトーストでいいですか?」

「あ、うん……いやいや、そんなこと自分でやるから。君は少しリビングでテレビでも見てると良いよ」

「そうはいきません、師匠のお世話は弟子がするものなのです! ほらほら、顔を洗って髪を整えてきてくださーい」

「う、うん」

 

 ……ものの見事に世話を焼き切られ、すっかり頭が上がらなくなってしまうほどに生活全般を牛耳られたのだ。

 元々何事につけ小器用なアランは自身の生活においても卒なく一人暮らしをこなせていたのだが、そこをプロ級の家事技能を持つエミリアが介入したことで一変。

 朝起きるところから夜眠るところまで、ほとんどの私生活を担われることとなったのである。

 

「な、なんかすごい罪悪感が……うう、ごめんよエミリア。不甲斐ない師匠でごめんなさい……」

「馬鹿なこと言わないでくださいよ師匠! 師匠が不甲斐ないならこの世のあらゆる哺乳類が甲斐性なしですって! 私がやりたくてやってるんです、気にしないでくださいよ!」

 

 テキパキと朝食を用意し始めるエミリアに、アランはどうにも申しわけなく思い謝罪する。

 そもそもの生活リズムが遅寝遅起き気味なアランからすると、自分自身で規則正しい生活に修正することで弟子に負担をかけまいと考えるのだが……

 それは誰あろうエミリア自身の強い意志をもって、断られる羽目となっていた。

 

「師匠のお世話を焼けるだなんて、こんな素敵なことってないんです……! おはようからおやすみまで、このエミリアちゃんがきっちりとお世話しますからね、師匠っ!」

 

 すさまじきは愛の力か。エミリアは本気でアランに想いを寄せ、そして彼を公私に亘り支えようとしていた。


 今はまだ弟子なのであるが、そんな健気な姿に割合チョロいアランが参ってしまい、数年後にはものの見事にゴールインすることになる。

 ──奇しくもそれは第六次モンスターハザードを経て、彼と彼女がさらに仲を深めてからの話となるのであった。

 ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 


 アランよりラブコメしてそうなやつが主人公やってる「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー

 https://ncode.syosetu.com/n8971hh/

 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー

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[一言] エミリアちゃん色んな意味で強すぎない?
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